10月22~24日の日程で、ロシアのタタルスタン共和国のカザンで、BRICS首脳会議が開催される。今年からBRICSの加盟国が、イラン、UAE、エジプト、そしてエチオピアに広がった(サウジアラビアは加盟が認められたが、参加意思がいまだ不明瞭なところがある)。

ロシアは、このBRICS首脳会議を、ドル支配体制への挑戦の機会と捉え、かなり力を入れて準備している様子だ。実際のところ、中東の石油取引の国際決済が、ドル(又はユーロ)による方法以外でなされていったら、それは大きな意味を持つだろう。中東の主要な産油国の同時加盟が、「脱ドル化」のための布石であったことは、間違いない。

BRICS内の二大経済大国である中国とインドとの取引において、すでにロシアはドル決済を回避する方法を用い始めている。次に中東に狙いを定めるのは、極めて順当な発想である。ロシアにとっては、BRICSの枠組みを用いて、米国とその同盟諸国による「制裁」体制を覆そうとするのは、当然、合理的である。

もちろんそれが順調に進むかどうかは、わからない。トランプ発言に見られるように、アメリカ国内でも、警戒心は高まっているはずだ。サウジアラビアなどには、強烈な外交攻勢がかけられていると思われる。

ロシアにとって政治的な追い風は、ガザ危機だ。アメリカを後ろ盾にしてイスラエルがアラブ諸国と関係改善の国交樹立を果たしていく「アブラハム合意」のプロセスは、ガザ危機によって深刻な停滞を見せている。

イスラム圏全域で、反米感情が高まっている。さらに国際司法裁判所(ICJ)にイスラエルのジェノサイド条約違反の訴えを起こしたのが、BRICSの一翼を担う南アフリカであったことが象徴するように、「植民地主義」の残滓を取り除いていこうとする「グローバル・サウス」の思想運動に、BRICS諸国は、高い思想的な親和性を見せている。

本来、ロシアは植民地化の経験を持たない国だと言ってもよいのだが、反「植民地主義」の思想に賛同を表明する努力を進めている。BRICSはそのための格好のプラットフォームだ。米欧諸国への物理的・精神的依存を高め続けているウクライナの事情を逆手にとり、ロシア・ウクライナ戦争を、アメリカ及び欧州諸国の帝国主義・植民地主義に対抗する戦いと位置付けている。そして、BRICSを通じて追求する政策との調和を図っている。