ウクライナ外務省は、プーチン大統領の訪問後、モンゴルは「戦争犯罪の責任を共有してしまっている」と糾弾し、「私たちは、パートナーたちと共にウランバートルに結果が生じるように活動していく」と述べた。
しかし、ウクライナ政府の宣言にもかかわらず、今のところモンゴルに対して制裁のような措置をとろうとするような国が出てきたという話は聞かない。それどころかまだ表立った批判すら出てきていない状態だ。
すでに私が数日前に書いたように、そんなことをしている余裕は、欧米諸国側は持っていないのが実情だろう。ウクライナが、自らの怒りのままに自由自在に欧米諸国を動かせるような状況ではない。
プーチン大統領のモンゴル訪問を見て:ICCとウクライナの苦境
プーチン大統領がモンゴルを訪問した。「ノモンハン事件」85周年を記念する式典という機会に、ロシアの国家元首の存在が不可欠だっただろう。
ただし、国際社会の側から見ると、ICC(国際刑事裁判所)がプーチン大統領を訴追してから、初...
もともとわれわれが「制裁」と呼んでいる措置は、国際法の用語法にしたがった正しい意味での「制裁」ではない。国連憲章第41条が定める「経済関係・・・の全部又は一部の中断」は、国連安全保障理事会決議をへた強制措置として国連加盟国に要請されるはずの事柄である。アメリカや日本が、独自の判断で、国内法制に基づいて行う行動は、意図が国際法違反行為の是正を求めることにあるとしても、いわばせいぜい「対抗措置」でしかない。
各国が独自判断で行う「単独制裁」という概念は、国連憲章41条の本来の制裁を模して比喩的に用いているものでしかなく、国際法上の明白な裏付けはない(篠田英朗「単独的な標的制裁の制度論的検討 : 国際立憲主義の観点から見た合法性と正当性」『国際法外交雑誌』第121巻4号、2023年、416-440頁)。