しかし現状のSAFは値段が高く、供給量もごく少ない。そこで、中東・アフリカ地域でSAFを生産しようとの目論見が考えられている。しかしこれでは、上記3)国産原料でつくれる、から離れ、他の資源と同様に輸入頼み体制で終始することになる。もっとも、その有望な中東でさえ、課題は山積しているそうだが。

ここで、問題点を整理してみたい。上記5種類のSAFは大別するとA)バイオ燃料系、B)合成燃料系、に分けられる。前者としては上記1)〜3)が相当し、それらはまた、エタノール系と非エタノール系(バイオディーゼル等)に分けられる。エタノール系は第一、第二世代がそれに当たる。廃食用油や微細藻類などからの油分等は、非エタノール系である。

B)合成燃料系としては、上記の4)と5)が該当し、前者は廃棄物原料の利用だが、廃プラは化石燃料由来だし、紙や木くずは木質系バイオマス由来であり、他用途との競合もある。故に入手自体が難しくなる可能性がある。

しかしそれ以上にこの燃料の基本的な問題点は、原料を高温でガス化するための必要エネルギーが大きく、得られた燃料価格を押し上げるだけでなく、エネルギー収支的にも必ずしも有利でない点である。

ガス化したままで使う方がエネルギー的には有利だが、航空機に積むには液体燃料が望ましい。その液体燃料を合成するためにFT法と言うプロセスを用いるが、合成反応自体が吸熱反応なので、その段階でまたエネルギーを使う(多くの場合、熱源は石炭)。そのため、得られた液体燃料のエネルギーまたはCO2収支が不利になってしまう。

この種の液体燃料は、1980年代の石油危機以降かなり熱心に研究されたが、現在でも実用化された例はほとんどないと言う現実がある。どうしても高くつくから。

B)の最後の5)は文字通り今流行のe-Fuelであるが、これは要するに水素を原料としてCO2を還元して炭化水素を作る試みであり、水素が安く大量に入手出来なければ実現できない。これもまた、メタン(CH4)などの気体燃料合成ならまだしも、FT合成で液体燃料製造となると投入エネルギーも大きくなるしコストも上がる。いずれにせよ、水素の入手可能性で大半が決まる。