と言うわけで、SAFとして頼りになるのはA)バイオ燃料系が主体となるのだが、バイオ燃料にも問題は多い。大きく分けて、次の問題がある。

  1. エネルギー・CO2収支の問題:バイオ燃料は「カーボンニュートラル」なのか?
  2. 供給可能量の問題:かつての化石燃料のように供給できるのか?しかも持続可能な形で。
  3. 経済性の問題:熱量当りの価格で化石燃料に対抗できるのか?
  4. 食料その他の用途との競合:コーン、サトウキビなどは無論競合する。その他のバイオ燃料も食用作物と栽培用地を取り合うので、間接的には食料生産と競合する場合が多い。
  5. 生態系保全の問題:真に「持続可能」であるためには、生態系を維持したまま生産できなければならないが、それは可能なのか?あるいは、持続可能な生産力とは?

これらはバイオ燃料をめぐる本質的な問題であるが、マスコミ等では一面的な解説しか行われていない場合が目立つ。

例えば「バイオ燃料は「カーボンニュートラル」であるから、CO2排出削減に役立つ」という誤解。確かに、バイオ燃料中の炭素が大気中CO2から光合成で固定された炭素であることは事実で、その限りでは「カーボンニュートラル」なのだが、実際にはバイオ燃料の製造段階で栽培・輸送・加工などのために種々のエネルギーが外から投入されるので、全体として見ると決して「カーボンニュートラル」ではなくなってしまう。これは過去の数多くの研究で明らかにされている。

例えばバイオエタノールの場合、ブラジルのサトウキビ原料でエタノールの蒸留用燃料にバガス(サトウキビの茎部分)を使えば、エネルギー収支は正(エタノールの発熱量>投入エネルギー)になるが、その他の場合は大抵負になる。エタノールは発酵後の濃度が20%程度しかなく、飲むにはこれでも良いが、燃料に使うにはこれを98%にまで濃縮するための蒸留用エネルギーが必要になるからだ。トウモロコシなどのデンプン材料や紙・木材などの原料では糖化工程も必要で、ここにもエネルギーがかかる。