ウクライナのキーウにある中央政権を、ソ連侵攻中のムジャヒディーンの北部同盟軍と重ね合わせることも不可能ではないかもしれないが、かなり無理がある。むしろロシアの占領地において、目に見えた反ロシア運動が起きていないことにこそ、注意を払わなければならない。占領地の人々の反発心の表明がなければ、その占領体制を覆すことは、難しい。

逆に言えば、ウクライナ側から見れば、これらの条件を有利に転換させることができれば、状況は変わってくる。

第一に、ウクライナは、国際世論に、ロシアの占領・併合を違法かつ無効なものだと訴えている。これは2022年2月の全面侵攻後に141カ国の賛同を得る国連総会決議を勝ち取るなど、一定の外交的成果を出した。

残念ながら、今年は国連総会決議が回避されているように、その後はウクライナに有利な国際世論が広がっているとは言えない。それどころかアフリカのサヘル諸国が、ウクライナのマリにおける反政府勢力への支援を糾弾する、といった事件まで起こっている。これはウクライナが軍事的勝利による奪還だけを目指しているためでもある。

第二に、ロシアにとってのクリミアと東備地域の併合の重要性の認知を下げなければいけない。ウクライナでは、この重要性の問題を、ロシア人とウクライナ人は歴史的に全く別の存在だ、という言説で、受け止めようとしているように見える。

この傾向は、ウクライナ(キエフ公国)のほうが歴史が古い国だ、ウクライナ(キーウ)のほうが文化的に優れている(ウクライナの後ろ盾の西洋文明は卓越した文明だ)、ロシアは野蛮で邪悪な国だ、といったイデオロギー的言説に陥りがちであるようにも見える。残念ながら、これはロシアに、併合地域をロシアの領土として確保し続けるための対抗運動を続けることの重要性を、よりいっそう覚知させる結果をもたらしている。

第三に、ウクライナが戦争に勝ちたいのであれば、ロシア国内と占領地の反政府運動を支援したり、厭戦気分を盛り上げたりすることが重要だ。クルスク州の人口6千人の町スジャを占領して死守するために合理性に欠けた多大な犠牲を払う覚悟を定めることが、それであるとは思えない。