内政でのミスは直ぐに命に係わる訳ではないし、世間が騒いで選挙となれば新政権で是正できる。が、相手国がある外交でのミスは取り返しがつかない。ウォルツの『国際政治の理論』にも「国内政治では暴力を抑止する国家権力が存在するのに対し、国際政治では国家の上位の主体が存在しない。勢力均衡とはそこから導かれる生存戦略である」との記述がある。
それゆえに、国際システムの中で国力が劣る国家は、より強力な国家に対抗すべく、軍事力を強化し、他の国々と同盟を結ぶ。平和主義の理念や国際法には多くを期待できないからだ。勢力の均衡をもたらす根本的な要因は、国際システムの無秩序な構造、すなわちアナーキーにある、と言うのである。
ウォルツは、17世紀の30年戦争のウェストファリア条約、18世紀のスペイン継承戦争のユトレヒト条約、19世紀のナポレオン戦争後のウィーン体制などを引いて国際政治の成立に触れ、複数の強国による多極構造が勢力の変化に応じて同盟が組み替えられ、それによって勢力の均衡が保たれていたとする。
長らく続いていた冷戦構造がソ連崩壊と共に壊れ、米国の一極体制となったが、習近平の中国が鄧小平の改革開放の果実を摂って一方の極に成長し、欧州各国もEUで固まった。新たな三極体制と言え、その中で日米同盟を強化する日本の在り方がウォルツの言う「勢力均衡」に沿うかどうかは別として、「もしトラ」ならまた違った舵取りが必要になるかも知れぬ。
トランプの対日政策が、例えば台湾に防衛費増額を求めたように、日本にも思いやり予算の増額を求めて来たら、米国は日本から出て行ってもらっても構わないが、その代わり日本は独自に「核兵器」と「原潜」を保有しますよ、と言ったウォルツ理論の一部に沿った議論を、誰ならトランプと出来るのか。
抑止力として誇示すべき「戦う意志」
19日の「産経新聞」に、2月17・18日に行われた「産経・FNN合同世論調査」の結果が載っていた。筆者は以下の2問に興味を持った。
【問】ロシアのウクライナ侵攻開始から今月で2年となるが、日本を含む西側諸国からの今後のウクライナ支援はどう...