判断のポイント
「修繕費は必要経費として落ちるけど、資本的支出は資産として計上し、すぐには必要経費にはならない」ことがわかりました。実際には、具体例に挙げた以外の改良費等もあります。どのような基準で判断したらいいのでしょうか。
基本的には「建物などの機能を元に戻すだけ」なのか、あるいは「建物などの機能をより向上させるため」なのかといった点が判断のポイントとなります。
判断がつきにくいものは数字で判断
ただ、現実には、それでも区別がつきにくいものもあります。その場合には、数字で判断します。具体的には、次のいずれかに該当するものについては修繕費として計上してよいこととなっています。
- 60万円未満の支出
- 修理する資産の前期末取得価格の10%未満の支出
「一部修繕費として計上、残りを資本的支出」もOK
この他、「支出した金額×30%」「修理する資産の前期末取得価格の10%未満の支出」のいずれか小さい方を修繕費として計上し、残額を資本的支出として資産計上する方法も認められています。
たとえば、1,000万円の建物を修理するのに支出した金額が200万円であったとします。200万円は金額からみて修繕費にはなりません。しかし、次のように処理することは可能です。
1,000万円(前期末取得価額)×10%=100万円>200万円(修理として支出した金額)×30%=60万円
∴60万円の方がより小さい
→60万円は修繕費として計上、140万円(=200万円-60万円)を資本的支出として資産計上
間違えて会計処理をしたなら
必要経費は課税の対象となる利益を圧縮する上、修理や改良に関する支出は金額が大きくなりがちです。そのため、「修繕費か、資本的支出か」の判断は税額への影響が非常に大きいと言えます。「うっかりミス」で済まされる項目ではありません。税務署から指摘されるまで放置しておけば、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが重くのしかかることになります。
会計処理の間違いに気づいたら、なるべく早く自主的に修正申告あるいは更正の請求を行うようにしましょう。
文・鈴木まゆ子/提供元・YANUSY
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