一定期間ごとの主な修繕工事
大規模修繕工事で行われる主な工事には、一定期間ごとにどのような項目があるか、代表的なものをご紹介します。こちらも「長期修繕計画作成ガイドライン」に修繕項目の目安が記載されており、それを参考にしています。
※これらは主にRC(コンクリート造)マンションを想定したものになっています。
大規模修繕1回目
屋上防水
バルコニー、開放廊下・階段等床
外壁
手摺等鉄部(雨掛かり部分は4年毎、非雨掛かり部分は6年ごと)
建具(ドア、サッシなど)
屋外鉄骨階段
自走式駐車場(10年目を目安)
15年目推奨項目
給排水管
給排水ポンプ
空調設備
換気設備
電灯設備
テレビ共聴設備(アンテナなど)
インターネット設備
インターホン
エレベーター
機械式駐車場
大規模修繕2回目
1回目の項目に加えて郵便受けや貯水槽、消防設備などが加わります。また1回目では補修で済んだものが、劣化の程度によっては交換の必要なものが出てきます。
30年目推奨項目
このガイドラインでは3回目までは言及していませんが、30年目を目安として修繕を行うべき箇所として以下のものを挙げています。
手摺等鉄部
給排水管
ガス管
空調設備
換気設備
電灯設備
配電盤
幹線設備
自家発電設備
電話設備
テレビ共聴設備(アンテナなど)
インターネット設備
インターホン
エレベーター
自走式・機械式駐車場
小規模な修繕で対処した方が良い工事
実際の建物の維持管理では、大規模修繕を待たず小規模な修繕で対処した方が良い工事もあります。設備機器の故障はその都度対処するのは当然として、定期メンテナンスとして行いたいのは、手すりなどの鉄部、給排水ポンプ、機械式駐車場などです。
これらは風雨にさらされる環境にあり、場合によっては錆びや故障が早い時期に発生することがあります。手すりや機械式駐車場などは損傷が悪化すれば安全性に関わりますし、給排水ポンプが止まってしまえばライフライン機能が失われ入居者に多大な迷惑をかけます。
エレベーターや消防設備のように法律で点検などの時期が決まっているものはもちろんですが、ここに紹介したものは大規模修繕を待たず、小規模修繕で対処することをおすすめします。
同時に行った方が費用を抑えられる工事
実際の大規模修繕の工事項目は、予算や劣化の程度によって行うものを選ばれると思いますが、工事の中には同時に行った方が費用を抑えられるものがあります。
代表的なものが屋上防水、バルコニー、開放廊下・階段等床、外壁、手すりなどの鉄部で行う防水塗装や錆止め塗装の工事です。これらは塗装業者が請け負うことが多く、一括して依頼をすれば工事金額が大きくなるため業者との価格交渉もしやすくなります。
また、足場を必要とするような外壁塗装やサッシ、雨樋の補修などもまとめて行うと、その都度足場を設置する必要がなく1回の足場費用で済ませることもできます。他にも電気業者が行う補修をまとめるなど、劣化の状態によっては同じタイミングで行うことで費用を抑えられる工事があります。
費用のかかる大規模修繕ですが、工事項目を先送りにする以外にも費用を抑える方法はありますので、専門業者に相談をしながら実施項目を決めると良いでしょう。
大規模修繕を先延ばしにするリスク
大規模修繕を費用の問題で先延ばしにしてしまうと、次の3つの損失が発生するリスクがあります。
1つ目に考えられるのは、外観を筆頭に各部分の景観が悪くなり新たな入居者が集まりにくくなることです。同じような家賃で見た目の良い物件が近隣にあれば、そちらに入居者が流れてしまうことになります。特に築年数の経った物件を所有されている方は注意が必要です。
2つ目は入居者が生活する利便性の悪化で、退去されてしまうことです。給排水に関するトラブルはもちろん給湯器や空調設備など、住み心地に直結する部分に故障が多ければ、より住環境の良い物件に移ってしまうことが考えられます。
最後は売却時の価値が下がってしまう恐れがあることです。投資物件を売却しようとした際に購入希望者が物件の修繕履歴を見て、大規模修繕が何年も行われていれば敬遠されたり、値下げ交渉をされたりすることもあるでしょう。適切に大規模修繕を行うことは安定した物件運営に必要であることを、ぜひ理解していただきたいと思います。
大規模修繕の費用は計画的に準備
予算が不足して大規模修繕を先延ばしにすると、空室発生の他にも建物の劣化や損傷が進み、より高額な修繕費用がかかることも考えられます。
区分所有物件は自動的に予算が積み立てられますが、より大きな収益を得られる1棟物件は所有するオーナー自ら、大規模修繕費用を確保しておくことが大切です。家賃収入から毎月一定額を積み立てるなど確実に大規模修繕の予算を確保し、適切な時期に工事を行えるようにしましょう。
文・武井利明/提供元・YANUSY
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