各種名義変更
遺産分割協議や遺言で親の財産を引き継ぐ人が決まった後は、早々に名義変更を行いましょう。主に以下のようなものがあります。
相続登記
賃貸用の建物と土地の名義変更手続きを行います。なお2020年12月現在、相続登記は義務化されていません。しかし法務省は2020年の臨時国会で所有者不明の土地問題から土地の相続登記の義務化案を検討しています。2019年11月時点では手続きは簡素化するかわり一定期間中に登記しない人には罰則を設ける案もでているため、しっかりと進捗を確認しておきたい内容の一つです。
共用部分の水道光熱費や火災保険の名義変更
共用部分の電気や水道、インターネットなどの名義変更はすみやかに行いましょう。なぜなら故人の預貯金口座は、金融機関に死亡届を出したり死亡の事実が知られたりした時点で凍結されてしまうからです。遺産分割協議がまだ終わっていない状態ならいったん相続人の代表者の口座で契約するなどの対処が必要になります。また固定資産税の納税義務も相続人が引き継ぎます。
実務上は、相続人の代表者がいったん立て替えて後日精算することになります。もし遺産分割協議が遅れる場合は、代表者の届け出を市区町村にしておくとよいでしょう。
家賃の振込口座の変更
既述の通り金融機関へ親の死亡を伝えると預貯金口座は凍結されてしまいます。つまり放置しておくと預金の引き出しだけでなく、賃借人からの家賃の入金もできなくなってしまうのです。相続が始まったら貸主の死亡と家賃の振込先の口座変更を賃借人に伝えなくてはなりません。なおこちらも遺産分割協議が済んでいない場合は、ひとまず相続人の代表者の口座を仮の振込先口座としておきましょう。
遺産分割協議が成立したら正式な相続人の預貯金口座をあらためて賃借人に伝えます。なお契約内容は、故人が契約したときのものがそのまま引き継がれるため、特段変更がないならそのままでもかまいません。ただ将来のトラブルを防ぎたい場合は、契約書を見直し必要に応じて再契約するようにしましょう。
銀行借入の引き継ぎ
借金などの債務(負の遺産)も相続財産の一つです。しかし、預貯金や不動産と異なり遺産分割協議の対象とはなりません。各相続人が相続分に応じて債務を承継するため、銀行は遺産分割協議の内容にかかわらず法定相続分に応じた債務の弁済を各相続人に請求できます。ただ銀行の求めに応じて各相続人が債務弁済に応じるのは難しい傾向です。
実際には、銀行の承諾を得たうえで遺産分割協議を成立させ、賃貸業の承継者がローンも引き継ぐことになります。ただ団体信用生命保険に加入していれば、相続人はローン返済を負わなくて済むので、入っておくべき保険といえそうです。
文・鈴木まゆ子/提供元・YANUSY
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