社会問題が浮き彫りになった現代に問いかける「道徳経済合一説」の精神
では、資本主義の父として今もなお注目を集めるのはなぜなのでしょう。その理由のひとつは、晩年の渋沢が唱えた「道徳経済合一説」にあるといえるでしょう。これは前項でも触れたとおり、道徳と経済の両立を信念とする説、つまり企業の目的が利益の追求にあるとしても、その根底には道徳が必要であり、事業で得た収益で公共の事業や社会や国の繁栄のために利益を還元すべきという考えです。
資本主義はしばしば、自己利益の過度な追求のために公益を顧みないというニュアンスを含みます。しかし、渋沢は資本主義の父と呼ばれながらも、自己の利益の追求を目指すだけの資本主義を目指してはいなかったことが「道徳経済合一説」からよくわかります。なお、この説は、1916年に発刊した渋沢の著書『論語と算盤』でも説かれています。“論語”は道徳を、“算盤”は経済活動を言い換えていることは明らかです。
地球温暖化や貧困問題など、資本主義の進展によって社会問題が浮き彫りになっている今だからこそ、私たちは経済活動と公益の両立を説いた渋沢の教えを再確認する大きな意義がある……。だからこそ、注目を集めているのではないでしょうか。
2021年の大河ドラマを通じて渋沢栄一の生き方を知れば、経営者のみならず経済活動にかかわるすべての人びとにとって大きな学びにつながるかもしれません。
▽現在公開されている2021年大河ドラマの情報
・タイトル:大河ドラマ「青天を衝つけ」
・放送開始:2021年2月14日(日)
・総合:午後8:00~9:00
・BSプレミアム・BS4K:午後6:00~
【作】大森美香
【主演】吉沢亮
【出演】小林薫、和久井映見、高良健吾、田辺誠一ほか
提供元・JPRIME
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