年商30億円を超えられない会社の特徴④ マネジメントが個の能力に依存している
年商30億円を超えられない会社では、マネジメントが個の能力に依存している状態であることが多いです。
例えば、マネジメントの重要ポイントの1つである「部下育成」。社内に部下育成ができる人材が社長のみである場合や、上司Aと上司Bがいる場合、上司Aは部下を育てることはできるが、上司Bは部下を育てることができない。
また、その上司Aも育てられる部下と育てられない部下が存在し、部下の性格やパーソナリティで偏りがあるなどのマネジメントが個の能力に依存しているがために、部下育成にバラつきが生じる状態になっています。
このような組織の社員インタビューでよく聞く言葉は、「上司が誰かによって、自分の将来が決まってしまう」「今の上司はAさんなんですけど、自分はBさんの部下になりたいです」という言葉です。この言葉はまさにマネジメントが個についたまま放置されている組織といっていいでしょう。
そのまま状態が続くと、部下育成と同様に「目標達成度」や「業務成長レベル」、「労働時間」などにも上司によってバラつきが生じるため、「目標達成の再現性が低い」、「サービスの品質が標準化されない」、「残業時間が非常に多い」など会社として様々なリスクを抱える可能性を高めます。
バラつきの生じる組織のままであれば、当然、企業成長もスムーズには進みません。売上においても、その成長にバラつきが生じ、停滞を招く原因にもなります。
組織にマネジメント力をつける
こういった状態から脱却するためには、個ではなく組織にマネジメント力をつける必要があります。いわば「マネジメントのあり方をチェンジする」ということです。
部下育成においては、管理職に対して部下育成の仕方を教育したり、会社として部下育成の仕組みをつくるなどして、マネジメント力を「個人」につけるのではなく「組織」につけていきます。
組織にマネジメント力をつけることによって「どの上司の下であっても、会社が求める水準レベルに社員が育つようになっていく」「目標を達成する社員が続出する」「労働時間や残業時間が見違えるように減る」という結果を生み出していきます。
これができると「素養のよい人材だったから育った」「才能のない人材だったから育たなくて辞めた」ということが減り、最低限の水準を満たしている人材であれば、誰でもある程度のレベルまで育つという形で「人材育成の再現性」を高くすることができます。このような状態になれば、売上は安定的に上がっていきます。
また、マネジメントの再現性が高くなれば、人材の「アタリ・ハズレ」による「博打」のような組織づくりではなくなり、安定した組織づくりが可能となるため、会社経営をしている社長からすると安心した会社運営ができるでしょう。
そのためにも組織にマネジメント力をつける必要があるのです。
年商30億円を超えられない会社の特徴⑤ 社員が一人前になる前に退職してしまう
中小企業の人材採用は年々厳しくなる一方です。そのような中で、苦労して採用した人材が1人前になる前に退職をしてしまうことも、年商30億円を超えられない会社では多く見受けられます。
「苦労したが何とか採用できて、手塩にかけて育ててきたのに3年で退職してしまった。これからというときに…」という声をよく聞きます。
退職理由は人によって異なりますが、社員が1人前になる前に退職してしまうことが長く続いている会社の場合は、退職者の退職理由はほぼ同じであることがほとんどです。年商30億円の会社規模の場合、業種によっても異なりますが従業員数はおよそ100名です。人材が定着しない会社が年商30億円を超えることは非常に難しいと言えます。
辞めてほしくない人が辞めないような構造をつくる
中小企業庁の「中小企業・小規模事業者の人材確保と育成に関する調査」(2014年12月)の資料に準拠すると、中小企業の離職率(入社3年以内)は、中途採用者で0.6%、新卒採用者で44.2%という数字が出ています。よく言われる「3年で3割辞めていく」という言葉は、残念ながら不変の法則と言ってもいいでしょう。
離職率が高い会社が決して悪いとは思いません。「組織が成長していくためには、新陳代謝こそ必要だ」と豪語する社長もいらっしゃいます。もちろんその考え方も正しいと思いますが、離職の「あり方」によるのではないでしょうか。あり方とは「辞めていく理由」と「辞めていく人」です。
もし、辞めていく社員が将来有望で「辞めてほしくない社員」だとすれば、それは適正な離職のあり方ではないでしょう。「適正な新陳代謝が必要」という考え方も、その代謝の対象は「自社にいたら、お互いが不幸になる」という社員を指していると思います。
しかし、辞めてほしくない人材の離職が続くとなれば、当然、手を打たなければいけません。
手の打ち方は辞めていく理由を正確に把握することです。
退職していく人材が退職理由を正直に話すことは半々ぐらいと言っていいでしょう。しかし本人から正直な理由を聞けずとも、社内に流れている雰囲気や普段の会話などから退職理由などはわかるものです。
退職理由のデータを1つ掲載します。図表3はエン・ジャパンが出しているデータで、様々な企業でも退職理由のデータを出していますが、いずれも上位の理由は似ています。特に必ず上位に上がるのが「給与」です。「離職率を下げるために、給与水準を上げましょう」とは言いませんが、自社の退職理由が給与に関連する理由が多いのであれば、辞めてほしくない人に適切な給与を払う仕組みや、将来的に有望な人に払う給与水準が「見える」ようにすることで、離職率低減に大きな効果があります。
大事なのは、いかにして辞めてほしくない人が辞めていかないような「仕組み」や「構造」をつくることです。
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