本記事は、佐々木啓治氏の著書『年商30億円の限界突破』(セルバ出版) の中から一部を抜粋・編集しています

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(画像=ZUU online libraryより引用)

役職あれど鍋蓋型組織

すべての意思決定を社長がする会社でも、組織の構成上、社員には「部長」「課長」「主任」などの役職が与えられ、一見すると「階層型」の組織になっています。しかし、実際には社長がすべての指揮・命令をしている「鍋蓋型」の組織になっていると言えるでしょう(図表2)。

鍋蓋型組織の場合、社員は全員「社長を見て」仕事をします。そしてその場合、役職だけのミドルマネジメントの言うことを聞く部下はほとんどいません。つまり中間マネジメントが機能していないということです。組織としてのマネジメント力が社長個人に集中している限り、ミドルマネジメントは育たず、それは社員が育つ数とスピードの低下につながります。

伸び悩んでいる会社の1つの特徴として、このような組織構造になっている場合が非常に多いです。

(画像=年商30億円の限界突破)
(画像=ZUU online libraryより引用)

年商30億円を超えられない会社の特徴② 社長が現場のトップとして活躍している

社長が現場の最前線に立ち、営業、サービス、管理、など社内すべての部署のトップとして活躍していることも年商30億円を超えられない会社では珍しくありません。

具体的なイメージでいうと、営業においては、社長が会社の売上の半分以上を自分で稼いでいます。また、サービスにおいては提供するクオリティが社内でダントツに高い。管理に関しても、人材採用の面接は社長自身が積極的に介入し、人材評価や人材配置についても社長がすべてを決定し、経理の分野でも銀行対応やキャッシュフローを考えた資金繰り、投資案件の判断などもすべて社長自身が行います。

このように会社の機能としての「攻め(営業部門など)」と「守り(管理部門など)」の両方で社内一の活躍をするため、私は社長が「エースで4番」の状態であると表現しています。

社長1人の限界値

年商30億円を超える組織をつくる場合、社長がいきなり現場から抜ける、というのは無理がありますが、組織をつくりながら徐々に現場から離れていく必要があります。

社長がどれだけ凄いエースで4番の選手であっても、人間が1人でできることには限界があります。社長が現場のトップで活躍し続けても、売上の伸びはいつか止まってしまうのです。それは「社長1人の現場の力の限界値」でしょう。

社長自身が現場で活躍して出せる成果が「1倍」であれば、社長が監督となり社員を成長させ活躍できる人材を増やすことで、その成果が「3倍」にも「5倍」にもなります。

私は社長自身が現場トップとして活躍すればするほど、社員が育たず、気づけば「社長1人に依存した会社」になっていた、という会社を非常に多く見てきました。そういった状態でも、「自分が現場に立ち続け、会社も利益が十分に出て、従業員にも給与を多く払えてみんな幸せな会社のままがよい」という思いを持っていらっしゃれば、何も変える必要はないと思います。

しかし、年商30億円を超えていきたい、自分が現場に出なくても売上を伸ばせる会社にしていきたい、という思いを持っていらっしゃる社長であれば、社長が「監督社長」となり、現場のトップから離れられる組織をつくる必要があります。

これは社長自身が「いつまで現場に出ていたいか?」そして「物理的にいつまで現場に出られるか?」を踏まえて考えるべきことでしょう。不測の事態が起こり、社長が現場から離れざるを得ない状況になったとき、また、社長が年齢を重ね、従来の現場でのパフォーマンスを発揮できなくなったとき、安心して現場を離れられる会社であるかどうかは会社を経営している社長自身の「命題」とも言えるのではないでしょうか。

年商30億円を超えられない会社の特徴③ 経営目線で仕事をしているのは社長だけしかいない

「ウチの社員には全く経営目線がない……」という社長は非常に多いのではないでしょうか。年商30億円を超えられない会社の場合は特にそれが顕著に表れます。

「経営目線」には様々な要素が含まれていますが、最もわかりやすいのは「経営数値」でしょう。より多くの売上とより少ないコスト・リスクで利益を最大化させる、という経営者にとっては当たり前の目線が社員には足りていない状態です。

経営目線のない社員の多くは、会社全体を見たときの「全体最適」ではなく、自分自身から見たときの「部分最適」の思考が強いため、そういった状態に陥りやすいと言えるでしょう。

例えば人材採用において、経営目線と現場目線では大きな違いが起こりやすいです。社員からは「忙しくて人手が足りないから社員を入れてくれ」という意見がよく出てきますが、経営目線からすると、「人材を1名採用すると年間〇〇万円の経費がアップする、そうなると赤字になる、または利益が〇〇万円減るから社員1人当たりに支払う賞与もが〇〇万円減る」という目線で物事を考えます。もちろん社長としては、1名採用した経費以上に利益が上がる可能性が高いと判断すれば採用しますが、そういった可能性が低ければ人材を採用することに二の足を踏みます。

このように社長と現場社員の日常業務の様々な事象に対する捉え方、レイヤーの違いが、年商30億円を越えられずに伸び悩んでいる会社には多く見られます。

目線の違いが社員との距離を離す

こういった目線のズレが生じたままだと、社長と社員の距離はだんだんと離れていくことになります。社長と社員がお互い「何でわかってくれないんだ」という思いを抱えたまま、日々フラストレーションが溜まっていきます。同じ方向を向いて仕事に取り組んでいない組織は効果的に機能しません。

社員が経営目線を持てるようになると、普段何気なく使っている会社の経費に対しても、意識の仕方が変わってくるでしょう。「とにかく売上」と思っている営業社員も利益志向がつくことによって、営業の仕方と成果が全く変わることもよくあります。自社で商品やサービスを開発している会社であれば、開発や製造に関わる上でのお金と時間両面でのコスト意識も断然違ってきます。

社長としても経営目線で社員とコミュニケーションをとれるようになれると、おのずと社員との距離が近くなり、日々の仕事がどれだけスムーズにいき、組織が効果的に機能するかが容易に想像できると思います。