素敵な人が集まる「求人」の仕方
メンバーの集め方も工夫しています。
うちはお店の前に募集広告を出したり、インターネットに書き込んだりはしません。求人広告を出すこともありません。
それは、うちのラーメンを食べたことがないのに面接をするのは無駄だと思っているからです。うちのラーメンを食べたうえで「ここで働きたい」と思ってくれた人だけに来てほしいのです。
うちではレジの横に小さく「メンバー募集」と貼ってあるだけです。そうすることで、ぼくのつくるラーメンが大好きな人しか応募してこないのです。
うちでは「ラーメンを食べたいから働いている」人がほとんどです。もっと言えば「ラーメンを食べに来て、ついでに働いている」ような状態なのです。
メンバーは若い子ばかりです。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学、タフツ大学が近いのでそこの学生もたくさんいます。
彼らにとって、ぼくははじめて直に接するボスだったりするでしょう。
その子たちがどんな社会人になるかは、学生時代に出会った人間で変わってきます。だからぼくは、つねに「理想の上司」「理想のリーダー」でありたいと思っています。そして、鶴麺が「理想の会社」でないといけないと思っています。うちの店は、そういう意味で教育機関だとも思っています。彼らには、お金を得るよりも、いろいろなことを学んでほしいなと思っています。
以前、マサチューセッツ工科大学の化学専攻を卒業したジョージというメンバーがいました。とても優秀な子で「夏に大学を卒業して、就職が4月なので100日くらい働きたい」と言って鶴麺に来たのです。
ぼくは、その期間だけでも理想の上司像、リーダー像を見せてあげたいと思いました。そうすることで、就職したときに今度は彼がチームのいいリーダーになれると思ったからです。そういうつもりで100日間、彼と接していました。
彼は一生懸命働いてくれました。そして、アルバイトの最終日に自分の親と大学の研究室の教授、友だちなど14人くらいでお店に食べに来てくれました。そして「ここがぼくの自慢の職場だよ。こういうところで働いていたんだよ」と伝えてくれました。そのことでぼくは「彼にとっての理想のリーダー像」に少しはなれたのかな、と感じました。
ジョージは今、糖尿病の研究をしています。研究所に入って、いいチームをつくっているはずです。いつかノーベル賞をとってくれたらいいな、と思っています。
うちはラーメン屋ですが、そうやって、上司像やリーダー像を見せるかたちで社会貢献ができると思っています。大げさに言うと「ラーメンでも世界を変えられる」くらいの気持ちでやっているのです。
【POINT】
あなたは誰かの「理想のリーダー」になっていますか?
文・⼤⻄益央/提供元・ZUU online library
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