退職時の資産を知っておく

~意外と知らない退職金の金額と受け取り方~

(画像=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)
(画像=ZUU online libraryより引用)

「このまま会社に残ったら、あとどのくらいの収入があるのか?」

「今辞めれば退職金はいくらなのか?」

この質問に即座に答えられるサラリーマンは少ない。私の場合も、退職を決めるまで、自分の退職金がいくらになるのか認識していなかった。

企業によっても違うが、最近では退職金の一部を「確定拠出年金(いわゆる IDECO)」で運用している会社も多い。IDECOってなんだっけ?と思った方は、最低限の知識ぐらいはネットで調べておこう。

また、早期退職制度がある会社なら、退職金に加算される金額も調べておきたい。

大手企業では1000万円以上上積みされるケースも少なくない。社員として抱えていれば毎年の給与に加え、社会保険料も負担しなければならないので、高額の加算金を支払ってでも早く辞めてもらった方がありがたいからだ。早期退職を考え始めたら早期退職制度の条件(対象年齢、加算金額)をよく調べておいた方がいい。

私はあと6カ月長く勤めていれば、企業年金が5年早く、55歳から支給されたことを退職届を提出した後に知った。金額にして約500万円。退職を6カ月も遅らせる気はなかったが、これが1カ月だったら後悔しただろう。

独立後のライフプランを考える

~働き方と収入のイメージを持つ~

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(画像=ZUU online libraryより引用)

独立にあたっては、自分なりのライフプランを持たないといけない。会社を辞める時期だけでなく、何歳まで働くのか、そして(65歳までは仕事に集中するとしても)65歳以降をどうするかも考えてみよう。

〈いつ会社を辞めるかを決める〉

「会社を辞める日」をいつに設定するか、これが独立に向けた最初の関門だ。今から役職定年年齢(多くの会社では50代半ば)の間で自分なりに考えればいい。役職が外れると、任される仕事のレベルが落ちる。新たな刺激を伴う学びの機会も激減するだろう。「閑職」「窓際」になってしまった後では、世間的な商品価値も下がってしまう。

退職時期を決める上で最も大事なのは「現場感覚」があるうちに再スタートを切ることだ。顧問紹介会社の担当者の話として、顧問紹介を始めた当初は大企業の元役員クラスを中小企業に紹介するのが中心だったが、最近ニーズが高まっているのは専門知識のある部長・課長クラスの人材だという話を紹介したが、これは今後、多くの方々に独立のチャンスが出てくることを示唆している。

サラリーマンとして50歳を過ぎたら一度冷静に会社内での自身の将来を考えてみるべきだ。役員コースに乗れそうで、それを喜びと感じるならその道を邁進するのもいいが、なれる人数も限られているし、役員になれば幸せとは限らない。

私の場合は、退職の最終期限を55歳に置いていた。結局、退職したのは54歳7カ月。退社を申し出たのはその9カ月前、53歳10カ月の頃だった。ギリギリのタイミングだったと思う。

フリーランスの仕事を軌道に乗せるまでには一定の期間は必要だ。独立が還暦近くになるとかなり遅いと思う。実際、私はこんなことを言われたことがある。

「60歳過ぎた人から最新のマーケティングって言われてもピンときませんよ」

自分自身はいつまでも若々しい気持ちでいても、世間の視線は思った以上に「年齢」に厳しい面もある。55歳を超えたら徐々に独立のハードルは高くなるだろう。

〈いつまで働くかを決める〉

フリーランスに定年はない。働こうと思えば何歳まででも働けるし、反対に早々にリタイアすることも可能だ。今後のライフプランを考える上では「何歳まで働くか」を考えておくことも必要だ。

今は65歳まで会社で働くことができるようになった。この流れに乗って会社にしがみつくのも一つの手だが、その場合は会社を辞めた後に新たなチャレンジをするのは難しいだろう。70歳を超えた後も元気な限り仕事がしたい思う人は、早めに会社から離れるという選択肢を検討すべきだ。

私と同い年(1961年生まれ)以降の人の年金受給開始年齢は65歳だが、受給年齢を70歳まで繰り下げると、受給額は月額で42%増えると言われている。一般的なサラリーマン世帯で月額8万~10万円程度の増額だ。

計算すると81~82歳まで生きた場合の総受給額は「70歳まで繰り下げ」した方が多くなる。現在の50代の方の平均寿命は男性83歳、女性88歳と予測されているので、平均以上生きるとしたら70歳まで繰り下げた方が得なようだ。その意味でも、これからは70歳までは働くのがいい選択のように思う。

〈5歳刻みの働き方を考える〉

「いつ会社を辞めるか」「いつまで働くか」を決めたら、5歳ごとに自分が何をやりたいかを書いてみる。特に65歳以前と65歳以降では働き方を変えてみるのもいいかもしれない。

一例としてはこんな感じだ。

①今~60歳
第二の人生をスタート。まずは独立後の仕事を軌道に乗せる。
最初の数年間は前職時代のスキルや人間関係をフルに活かしてビジネスを軌道に乗せたい。フリーランスになってどのくらい稼げるのかを見極める時期でもある。過度に焦る必要はないが、必死でがんばらないといけない時期だ。

②60歳~65歳
フリーランスとして収入を維持、安定させていく。会社に残っていたら再雇用で収入は半減する時期だが、フリーランスとしてはバリバリの現役として働ける。会社に残った連中からは「羨ましがられる存在」になる。

③65歳~70歳
やりがい、生きがいへのシフトを考える時期。
週休3日にして、「やりがい」「生きがい」を中心とした仕事に絞り込んでいく。収入は65歳以前の半分程度でもいい。

④70歳~75歳
人のために生きる。
年金を受給しつつ、仕事は頼まれたらやる。「人のためになる仕事」は続けたい。

〈収入の試算〉

以上のことをふまえて、お金のことを具体的な数字で考えてみよう。まずは左記の3通りの場合の生涯年収を概算で計算してみよう。

①会社を辞めないで60歳定年、65歳まで再雇用で働いた場合
―60歳定年までの収入(役職あり期間+役職定年後)
―退職金
―60歳以降の再雇用の時の収入(会社によるが、定年前年収の半分程度)

②定年前に辞めて、65歳までフリーランスで働いた場合
―退職金+早期退職割増金
―フリーランスになって以降の収入(65歳まで)

③定年前に辞めて、70歳までフリーランスで働いた場合
―退職金+早期退職割増金
―フリーランスになって以降の年収(65歳まで+65歳以降)

①はある程度正確に見積もれるので、フリーランスになった場合、それと比較してどの程度の収入を得れば会社に残った場合の収入を超えることができるかを②、③でシミュレーションできるはずだ。ただし、税金、社会保険料の違いや、フリーランスの場合は経費計上がどの程度できるかによって実収入はかなり異なるので、あくまでも目安程度と考える。

「夢を実現するにはまず書いてみることだ」と言われる。描いたライフプランが実現できるかどうかは分からないが、何のイメージも持たずに会社を辞めることはできない。あなたが独立を考えているならば、自分なりのライフプランを一度書いてみることをお勧めする。自分なりに納得できたら、いよいよ独立に向けた準備に入る時だ。

文・高田 敦史/提供元・ZUU online library

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