NISAの対象商品は上場株式、上場投資信託、ETF、REITであり、外国債券に投資することはできない。しかし、投資信託を使えばNISAでも外国債券を運用できる。ここでは、外国債券投資の特徴とNISAでの運用方法について解説する。

目次
1.外国債券(外債)とは
2.NISAで外国債券に投資する方法
3.NISAで買える代表的な外国債券型投資信託5選
4.NISAで外国債券型投資信託を買う際の注意点

1.外国債券(外債)とは

まずは債券投資の概要と、外国債券のメリットを確認しておこう。

債券投資は株式投資よりも安全性が高い投資方法

債券とは、国や地方公共団体、企業などが資金調達のために発行する有価証券のことだ。例えば、日本国が発行する債券は「国債」だ。投資家は債券を保有することで発行体から定期的に利子を受け取り、満期になる償還日には元本または約束された金額を受け取る。債券投資は、一般的に株式投資より安全性が高いと言われている。

外国債券の種類は多い

発行体・発行市場・通貨のいずれかが海外であれば、外国債券と見なされる。外国の発行体が各国の国内市場で発行した外貨建て債券は、もちろん外国債券だ。外国の発行体が日本国内において外貨建てで発行した債券(ショウグン債)や、外国の発行体が日本国内において円貨建てで発行した債券(サムライ債)も外国債券である。

海外において円貨建てで発行された債券(ユーロ円債)も外国債券に含まれる。元本と利息が同じ通貨で、償還金の通貨が異なるデュアルカレンシー債やリバースデュアルカレンシー債という外国債券もある。

外国債券投資のメリット

外国債券のメリットは、低金利が続く日本と比較して金利が高いことだ。日本の10年国債利回りがマイナス0.07%であるのに対し、米国は1.51%、オーストラリアは0.95%、メキシコは6.63%だ(2020年1月のデータより)。ただしx、ドイツは低金利政策によりマイナス0.43%と国ごとに異なる。極端な高金利債券は、信用リスクが伴う。

外国債券投資では、為替差益が得られるのもメリットだ。外国債券購入後に円安に振れると、利子や償還金を受け取る際に為替差益を得られる可能性がある。ただし、これは為替差損のリスクと隣り合わせだ。

外国債券投資には、リスク分散ができるというメリットもある。債券は基本的に株式とは異なる値動きをするため、資産のリスク分散効果が期待できる。

2.NISAで外国債券に投資する方法

現行のNISAでは、外国債券に直接投資することはできない。ただし、外国債券を組み入れた「投資信託」を購入することによって債券投資をする方法がある。

外国債券の投資信託は主に8種類ある

投資信託の中には、外国債券を投資対象とするファンドが数多く存在する。どの外国債券を選べばいいかわからない場合は、さまざまな債券商品に投資する投資信託を購入すると、1銘柄で広範囲に投資することができる。

外国債券型投資信託は以下のように分類されることが多いので、NISAで投資信託を選ぶ際の用語として覚えておくといいだろう。

・グローバル債券

グローバル債券とは、2ヵ国以上の国で同時に発行・募集される債券のことだ。北米、欧州、アジアなど複数の地域や通貨の債券が組み入れられるが、商品によって国や通貨の比率は異なる。NISAで購入できる外国債券型投資信託の中で、最も多いタイプだ。特に先進国型は信用力が高く、初心者でも選びやすい。

・北米債券(米国債)

米国債は一般的に安全資産と考えられており、2020年に入ってからは新型コロナウイルスの影響で資金流入が続いている。流動性が高く、NISAでも取り扱い数が多い。

・欧州債券

欧州全体の債券を対象とするものや、英国やドイツ、トルコ、デンマークなど特定の国を対象とした債券もある。

・エマージング(新興国)債券

世界的に債券市場では低金利が続く中、新興国債券は相対的に高い利回りが期待できる。ただし地政学的リスクや世界経済の減速の影響を受けやすく、信用リスクが高いことに注意したい。

・アジア・オセアニア債券

オーストラリア、インド、インドネシア、マレーシア、タイ、韓国、中国、シンガポール、フィリピン、台湾、ベトナム、ニュージーランドなど、主としてアジア・オセアニア地域の債券に投資するファンドだ。国別のものもあれば、ひとまとめになっているものもある。

・短期債

残存期間が1~3年程度の短期債券を主な投資対象とするファンドだ。比較的格付けの高い公社債を対象にしていることが多く、リスクは抑えたいが銀行預金よりは高い金利を得たい場合などに向いている。

・ハイイールド債

ハイイールド債とは利回りが高く信用格付が低い債券のことで、ジャンク債ともいう。

・ソブリン債

ソブリン債とは、中央政府によって発行・保証された債券のことだ。

「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」の違い

外国債券型の投資信託を検索していると、「為替ヘッジあり」「為替ヘッジなし」といった文言が商品名に入っているものが見つかる。為替ヘッジとは何か。「あり」と「なし」では何が違うのだろうか。

外国債券の投資信託には、常に為替差損のリスクがついてまわる。そのリスクを回避するのが、為替ヘッジだ。一般的には「先渡し契約」と呼ばれる、購入時と同じレートで通貨を交換する契約を結ぶ方法が取られるが、為替の先物を売建てする方法もある。

いずれにしてもコストがかかり、それが信託財産から差し引かれるため基準価額が下がる要因になる。コストを払ってでも為替リスクを避けたい場合は「為替ヘッジあり」、為替差益も収益に入れたいと考える場合は「為替ヘッジなし」を選ぶといいだろう。

外国債券の毎月決算型のメリットとデメリット

外国債券型の投資信託には、「毎月決算型」が多くみられる。一般的に年1回決算が行われるファンドが多いが、月1回決算を行って分配金を支払うファンドは毎月決算型と呼ばれる。

毎月決算型の投資信託は、運用成果をこまめに受け取れるメリットがあるが、分配金を支払うことによって利益が再投資に回されないので、複利効果が得られないというデメリットもある。

また、投資信託の分配金が支払われると基準価額が下がるため、値上がり益が目減りする。特に元本払戻金(特別分配金)を支払うタイプの投資信託は、元本を取り崩して分配するため、収益ではなく自分の資金が戻ってきただけであることを認識しておく必要がある。

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篠田わかな
執筆・篠田わかな
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。
外資系経営コンサルティング会社にて製造・物流・小売部門のコンサルタントとして業務/システム改革プロジェクトに参画。退職後独学でFP技能士の資格を取得。開業して個人事業主となり、マネー・ビジネス分野の執筆、企業からの請負業務を手がける。

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