2018年1月からスタートし、順調に口座数を伸ばしているつみたてNISA。つみたてNISA口座開設者のうち、33%は一般NISAからの切り替えだ。一般NISAに保有資産があってもつみたてNISAへの変更は可能なのだろうか。
目次
1.一般NISAとつみたてNISAへ変更するときの注意点
2.変更しても資産はそのまま保有可能
3.変更は同一金融機関か別かで手続きが異なる
4.つみたてNISAに変更すべき人
5.新NISAが始まってもつみたてNISAは継続
6.最初からつみたてNISAでスタートするという手も
1.一般NISAからつみたてNISA(積立NISA)へ変更するときの注意点
つみたてNISAは毎年40万円を上限に投資が可能で、分配金や売却益が最長20年間非課税になる制度だ。一般NISAの毎年120万円・最長5年間に比べ、長期的で安定的な資産運用に向いている。
一般NISAとつみたてNISAは同時利用できない。現在一般NISAの口座を開設しているなら、つみたてNISAへの変更手続きをすればつみたてNISAに切り替えできる。ただし変更できるのは年に1回だけだ。その際、タイミングに注意が必要である。同年中につみたてNISAを始めたい場合は、次の2点を満たす必要がある。
- 一般NISAで今年の投資枠を1円も使っていない
- 9月30日までに手続きを終えている
すでに一般NISA口座においてその年の投資枠で買い付けをおこなっていると、切り替えは翌年までおあずけだ。つみたてNISAの開始は翌年まで我慢して、今年の一般NISAの投資枠を使い切ることに注力しよう。
また、投資枠がまっさらな状態でも、10月に入ってしまうといずれにしても翌年ということになる。一般NISAからつみたてNISAへの切り替えは、年の早い時期に済ませてしまうのが良いだろう。
2.一般NISAからつみたてNISA(積立NISA)に変更するときに保有資産を売却しなくてもいい
一般NISAからつみたてNISAに切り替える際、一般NISAに運用中の資産がある場合はどうなるのだろうか。よくある誤解なのだが、一般NISAが使えなくなるのではと、保有資産をあわてて売却する必要はない。
一般NISAの資産は5年間非課税でそのまま保有できる
一般NISAで保有中の資産が購入年から5年間非課税なのは、つみたてNISAに変更した後でも変わらない。できなくなるのは一般NISAでの買い付けだけで、保有し続けても期間内は非課税のままだ。一般NISAでの非課税期間が終わったら(1)翌年の非課税投資枠にロールオーバーする、(2)課税口座に移す、(3)売却する、の3択になるのも変わらない。
(1) は少々複雑なのでもう少し説明すると、ロールオーバーは有効期間切れの資産を次の投資枠を使って一般NISA口座に保有し続けることができる仕組みだ。これをすることで課税口座に移したり売却したりする必要がない。
ただし、つみたてNISA口座を選択している状態だと、一般NISAのロールオーバーはできないので注意したい。ロールオーバーは買い付けと同じ行為なので、適用されていない口座では実行できない。どうしてもロールオーバーしたければ、その年に一般NISA口座に設定を戻すのを忘れないようにしなければならない。
つみたてNISAに資産がある状態で一般NISAに切り替えをしても、非課税が継続されるのは同じだ。つみたてNISAの場合、購入後20年間有効ということになる。ただしつみたてNISAはロールオーバーの制度がないので、20年経つと課税口座への移管か売却かのいずれかを選択することになる。
一般NISAとつみたてNISA(積立NISA)の効率的な口座変更例
あなたが一般NISAに2018年度投資枠で購入した資産を保有している状態で、2019年からはつみたてNISAへの変更を検討しているとする。一般NISAの銘柄は好調で分配金もよく、5年いっぱい非課税の恩恵を受けた後も継続したいと考えているとするなら、次のように活用するのはどうだろうか。
2018年……一般NISAで買い付け(→2022年まで非課税)
2019年……つみたてNISAに切り替え・買い付け(→2038年まで非課税)
2020年……つみたてNISAで買い付け(→2039年まで非課税)
2021年……つみたてNISAで買い付け(→2040年まで非課税)
2022年……つみたてNISAで買い付け(→2041年まで非課税)
2023年……一般NISAに切り替え・ロールオーバー(→2027年まで非課税)
一般NISAとつみたてNISAは同年に買い付けすることはできないが、双方の口座に資産を保有するのは問題ない。上記のように、一般NISAのロールオーバーの年だけつみたてNISAから一般NISAに戻し、翌年からまたつみたてNISAに変更しなおせば、両方の非課税効果を享受することも可能というわけだ。あくまでも例だが、参考にしてはどうだろうか。
3.一般NISAとつみたてNISA(積立NISA)の変更は同一金融機関か別の金融機関かで手続きが異なる
一般NISAからつみたてNISAに変更する場合の手続き方法について簡単に説明する。細かい手順については各金融機関のホームページを参考にしてほしい。
同じ金融機関内で一般NISAからつみたてNISAに切り替える場合
その年に一般NISAで買い付けを行っていないなら、「金融商品取引業者等変更届出書(勘定変更用)」を金融機関に提出するだけで同年からつみたてNISAが利用できる。当年中に間に合わせるには9月30日までに手続きを完了させる必要があるので余裕を持って進めたい。その年に一般NISAで買い付けをおこなってしまっている場合は、翌年からつみたてNISAを選択できるよう「非課税口座異動届出書」を提出する。
異なる金融機関のつみたてNISA (積立NISA)を開設したい場合
金融機関の変更はその年の9月30日までに手続きが終わっていれば同年中に利用が開始できる。変更前の金融機関に「金融商品取引業者等変更届出書」を提出すると、「勘定廃止通知書」を交付してもらえる。それを新しい金融機関の「非課税口座開設届出書」に添付して提出するのだが、その際非課税口座は「つみたてNISA」に設定すれば手続きは完了だ。
4.一般NISAからつみたてNISA(積立NISA)に変更すべき人
一般NISAからつみたてNISAに口座を切り替えるには、それなりの手間がかかりそうだ。そこまでしてでも、つみたてNISAに変更すべき人とはどんな人だろうか。
リターンよりも安定性を重視したい人
一般NISAはつみたてNISAよりも商品の種類が多く、積極的にリスクを取ってリターンを狙うものも多い。たとえば小型成長株や新興国に投資するファンドは、値上がり益追究型だ。
運用益非課税のメリットを最大限に活用するためには、ある程度リターンを追求することもあるだろう。しかし、着実に資産を増やしていきたいと考えている場合は、ハイリスクリスク商品は適さない。つみたてNISAは、値動きが安定していて長期で運用するのに適している商品のみを対象としており、コツコツ資産形成したいと考えている人に向いている。
銘柄選びが得意でない・時間がない人
一般NISAの対象商品は、9,995銘柄もある(2019年8月末時点)。公募株式投資信託が最も多く、上場株式、ETF(上場投資信託)やJ-REIT(不動産投資信託)もある。一般NISAの対象商品の数が多いことはプラス要素だが、銘柄選びに手間がかかるとも言える。普段仕事で忙しいビジネスパーソンや、銘柄選びに苦手意識がある人にとっては、どの商品を買うべきか考えることは負担かもしれない。
一方つみたてNISAの対象商品は、金融庁の基準をクリアした181本に限られる。単純計算では、銘柄選びの手間は55分の1で済むことになる。
売買のタイミングが難しいと感じる人
投資において、売買のタイミングはプロでも難しいと言われている。投資初心者ならなおさらだ。つみたてNISAの積立投資では、一定額を定期的に購入するため、高値掴みの心配はない。
価格が高いときには少なく、安いときには多く商品を購入するため、取得価格を平準化できる。これが、時間分散によるリスク軽減効果だ。
通常の積立投資では手数料が発生することがあるが、つみたてNISAでは定期的に買い付けを行うことによる手数料は発生しない。また、一般NISAは5年で売却またはロールオーバー(翌年の非課税投資枠に移すこと)の選択を迫られるが、つみたてNISAは非課税期間が20年あるため、売買の頻度が少なくて済む。
5.新NISAが始まってもつみたてNISA(積立NISA)は継続される
現行の一般NISAおよびつみたてNISAは2023年で終了し、2024年からは新NISA(仮称)がスタートする。つみたてNISAを運用している人は、新NISAに変更するか、つみたてNISAを継続するかを選択することができる。
新NISAは「つみたて」と「一般」の「2階建て」に
新NISAの仕組みはこうだ。1階部分には現行のつみたてNISAのような投資枠、2階部分には現行の一般NISAのような投資枠が設けられている。投資上限額はそれぞれ年間20万円と102万円、非課税期間はどちらも5年で、非課税投資額の合計は610万円だ。
2階部分を使用するには、先に1階部分の投資を行う必要がある。これまでのように国内外株式のようなリスク商品に投資したい場合は、まず金融庁が指定した商品に積立投資をする必要があるということだ。金融庁としては、国民に積立・分散投資による長期の資産形成を促したいとの考えがあるようだ。
投資経験者は新NISAの「2階だけの利用」もできる
現在の一般NISAで年間120万円をアクティブに運用している人にとっては、新制度の条件は厳しく感じるかもしれない。しかし、2階建ての原則には例外が設けられている。
既存のNISA口座開設者・投資経験者であれば、2階部分だけを利用できるという規定だ。新NISAの開始までに口座が開設されていれば、一般NISAだけの利用もできるということだ。
新NISA開始後に口座開設をしたとしても、年間20万円満額投資する必要はないので、月1万円程度でも積み立てればいいと考えると、さほどハードルは高くない。ただし2階の対象商品は、現行一般NISAで採用されているようなハイレバレッジの投資信託など、安定性に欠ける商品は除外される。
改正後もつみたてNISAは継続、新NISAとの2択に
現行のつみたてNISAでは、年間40万円を20年間非課税で運用できる。それに比べて、新NISAの1階部分にあたる積立投資の年間20万円を最大5年間非課税で運用するのは、明らかに物足りない。
現行NISAは2023年にいったん終了し、2024年に衣替えとなる。それが、先ほど説明した新NISAだ。つみたてNISAについては、現行での非課税投資期間は2037年までの予定だったが、5年延長されることが決まっている。つまり、2042年までは新規買付ができるということだ。新制度では、2階建ての新NISAとつみたてNISAが並立しており、いずれかを選択することになる。
現在つみたてNISAを運用している人が、引き続き長期の積立投資をメインでやっていきたいと考えているのであれば、つみたてNISAを継続すべきだろう。投資枠が大きく、非課税期間も長いからだ。
一方で積極的にリターンを取り、非課税効果を最大化したいと考えているなら、つみたてNISAではなく新NISAを選択すべきだ。少しの積立投資をするだけで、102万円の一般NISA投資枠が手に入るからだ。
ロールオーバーの仕組みがお得になる
新NISAにおける積立投資の非課税期間は5年しかないが、5年経つとつみたてNISAにロールオーバーできるのが大きな特徴だ。しかも、移管時には今のように時価ではなく、取得価格が基準になる。
たとえば20万円で購入した商品が30万円に値上がりしたものをロールオーバーすると、投資枠20万円で30万円分を移管できる。現行では非課税枠を30万円使ってしまうので、この改正は利用者にはありがたいはずだ。
6.最初からつみたてNISA(積立NISA)でスタートするという手も
これからNISA口座を開設するなら、どちらにするかよく吟味し、つみたてNISAが良さそうだと判断した場合は最初からつみたてNISAの口座を開設することを強くおすすめする。面倒な変更手続きをしなくても済むからだ。各証券会社に初めて口座開設の申込をする際は、つみたてNISAで申請することができる。
なお、当記事は「令和2年度税制改正大綱」を基にしており、内容は変更される可能性がある。細かい手続きや条件などは、2024年までに確認するようにしておきたい。
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