2020年のように新型コロナで大幅に需要が落ち込んだときは、政府が借金して給付金を出すことも意味がありましたが、それによって借金は大幅にふえました。財政赤字を増やしたら借金が減るといううまい話はないのです。
Q. 収入のないお年寄りにお金を分配するのはいいことだと思いますが?
たしかにフローの所得はお年寄りのほうが少ないのですが、ストックでみると、世代別の家計資産は、60歳以上の世帯の平均が約4800万円なのに対して、30歳未満は754万円。資産はお年寄りに片寄っているのです。
しかし年金は一定の年齢を過ぎると、大金持ちでも一律に支給されます。医療費もお年寄りは安いので、今の社会保障は貧しい若者から豊かなお年寄りへの所得逆分配システムなのです。
Q.社会保障は社会の助け合いなので、個人の損得はしょうがないのでは?
それが厚生労働省の年金マンガの主張です。政府も世代間格差があることは認めていますが、それしか方法がないといっているのです。
でも社会保障の目的が最低限度の生活を保障するセーフティネットだとすると、65歳以上になったら一律に年金をはらう制度はおかしいですね。大金持ちのお年寄りもいれば貧しい若者もいるので、年金制度は不公平です。
Q. ではどうすればいいんでしょうか?
国民負担の問題は社会保障の問題といってもいいので、負担を減らすにはお年寄りに片寄った給付を是正する必要があります。一時的に国債で赤字を埋めても、金利や物価が上がったら止めないといけません。国債は持続的な財源にはならないのです。
そのしくみとしては、日本維新の会が提案しているベーシックインカムが理想ですが、これには100兆円近い財源が必要です。もう少し政治的に実現できそうな案としては、河野太郎さんが自民党総裁選挙で提案した最低保障年金もありますが、これでは世代間格差がのこります。
130兆円もある社会保障のゆがみを是正するのは大変です。1%ちがうと1兆円以上の損得が出るので、たくさんの圧力団体が政治家に陳情します。その話をいちいち聞いていると支出はふえ、国民負担もふえる一方です。岸田首相はお得意の「聞く力」を封印して、国民負担の増加に歯止めをかけてほしいものです。