技術の移転やインフラ構築には、日本側の人的資源の長期派遣、数千億円規模の資金投入、教育制度・行政制度への支援など、国家的な覚悟が必要といえる。単なる「技術の売り込み」では到底立ち行かない。(最後に添付した比較表参照)
2. アジアのニーズとズレる「ゼロエミッション」
インドネシア、ベトナム、タイなど多くのアジア諸国では、依然として石炭やガスが主力電源であり、まずは「安定・安価な電力供給」が最優先課題である。再エネ導入にしても、送電網や需給調整の能力が限られ、無制限な拡大はむしろ系統不安定化を招く。
こうした中で、日本の「ゼロエミッション共同体」は、現地の開発段階やエネルギー事情にそぐわないトップダウン型の構想となっている。欧米発の「脱炭素=絶対善」の思想を、アジアにそのまま輸出することは、新たな環境植民地主義と受け取られかねない。
3. 国内政治の影響:再エネ議連の影
今回のAZEC展開にも、国内の再エネ推進勢力、特に「再エネ議連」の影が見え隠れする。再エネ議連は、「再生可能エネルギーを妨げている規制を撤廃し、導入拡大を促進する」ことを掲げているが、以下のような問題を内包している:
- 理念先行でコスト・系統安定性などの現実を軽視している。
- 地方での自然破壊や住民トラブルを「再エネへの逆風」として矮小化している。
- FIT/FIPによる国民負担の膨張には無関心である。
- 一部企業・団体との癒着やロビイングの温床となっている。
こうした勢力がAZECを“第二のビジネスチャンス”と見なしている可能性は否めず、本来ならば現地のニーズと日本の支援の一致を丁寧に見極めるべきところが、「再エネ輸出」という経済的都合にすり替えられている懸念がある。
4.求められる視座:「炭素共生」へ
日本が果たすべきは、「脱炭素の旗手」ではなく、「持続可能なエネルギー共生のパートナー」である。
アジア諸国が真に必要としているのは、現実的で段階的なエネルギー移行支援であり、安定性・コスト・供給能力をバランス良く満たす選択肢の提供である。再エネやゼロエミッションの理念を押し付けるのではなく、「炭素と共に生きる」持続可能な道を共に模索すべきである。