先進国において農業は、食料の安定供給のみならず、食文化の維持、地方振興、景観保全など、さまざまな観点から合理的な範囲での保護が必要だ。また、国産食品を愛好する気持ちも貴重である。しかし、国際常識からかけ離れた価格設定になっていたり、逆に安定供給を妨げるような事態を招いている現状は、本末転倒と言わざるを得ない。

繰り返すが、日本より一人あたりGDPが高く、自然条件も厳しい韓国において、米5キロが1,500円程度で売られている現実と比べて、倍以上の価格で米が販売されている日本の状況には、合理性がまったくない。バンコク並みとは言わないが、せめてソウル並みの価格帯でやっていけるよう、農業政策を抜本的に見直す勇気が必要だ。

なお、私はウルグアイ・ラウンドの農業交渉の際、フランス政府と互いに抜け駆けして降りないように言いくるめて、当時の通産省に「まだ、フランスは農業で降りないから、日本も米で粘って交渉を壊しても日本だけのせいとは言われないから頑張れ」とか言っていた立ち場で、実際3年間、合意は先延ばしになった。

また、1980年代から農業に関心を持ち、先進的な農業を実践している現場を専門家と共に数多く視察してきた。国土庁地方振興局の参事官としても、また物書きとしても、農業政策について経済誌などに執筆してきた経験があり、決して素人ではない。