この一連のプロセスは、まるでチェスのプレイヤーが次の一手を考える時に、頭の中で何手先までシミュレーションするのと似ています。
たとえば囲碁の名手や将棋のプロが、いちいち盤を動かさなくても何手も先の展開を脳内シミュレーションして次の一手を導き出すように、AI自身が“頭の中のマインクラフト世界”を走らせて試してみるのです。
ある意味で人間のように世界を「理解」し「想像」を行っていると言えるかもしれません。
AIには心がなく純粋に計算によって将来を思い描いているだけですが、人間だって未来の想像に常に心情を伴っているわけではないでしょう。
AIは将来的な影響を想像することで「マインクラフト」をプレイできる / FIG 3は、Dreamerの世界モデルがどのようにして未来の映像を自ら「想像」するかを視覚的に示した図です。 まず、システムには直近の5枚のコンテキスト画像が与えられ、これによって現在の状況が把握されます。 その後、AIはこの情報をもとに、自分の中で次に何が起こるかを予測する「頭の中の映画」を作り上げるように、45フレーム分の未来の映像を生成します。 これは、まるで映画の予告編を自分で作り出すかのようなプロセスです。 たとえば、巨大な迷路の中を四足歩行ロボットが進むシーンがあるとすると、最初の5枚の画像で現在のシーンを把握し、そこからロボットがどのように動き、迷路のどの部分にたどり着くかを、詳細な動画のように「思い描く」わけです。 この内部シミュレーションは、実際のゲーム画面にアクセスせずとも、未来の状況を高い精度で再現できるため、AIはあたかも自分で「予告編」を作り、最適な行動を選ぶためのヒントを得ているように見えます。 つまりAIが現実の環境をただ記憶するのではなく、その背後にあるルールや構造を理解し、次に起こるであろうシナリオをまるで自分の頭の中で映画を制作するかのように生成している様子を示しているのです。 この能力により、AIは実際に行動を起こす前に、未来の結果をあらかじめシミュレーションし、より効率的に最適な戦略を見出すことが可能になります。/Credit:Danijar Hafner et al . Nature (2025)