例えば今回の大統領令の一つである「死刑の復活※26)」も、トランプ政権の「非容認派」としての「犯罪を許さない」というスタンスを象徴する一つの分かり易い事例かもしれない。

第Ⅱの柱 米国を再び買い求めやすい&エネルギー支配国にする

次に「エネルギー政策」であるが、これはつまり、「グリーンエネルギー」から「経済合理的エネルギー」への転換と言えよう。人間が今後も経済活動をしていく以上、気温上昇をどこまで許容し、排出削減のみならず技術革新によってCO2の吸収や抑制をどれだけ実現するのか。経済活動、気温上昇、技術革新という三角形で問題に向き合わないと、現実的な対処は難しいのではないかと感じる次第だ。

トランプ氏は経済合理性を優先するエネルギー政策への転換を図る意思を示し、それは就任初日の「パリ協定からの脱退」や「アラスカの資源ポテンシャルの解放」などの大統領令からも読み取れる※27)

LNG日本輸出を拒んだ米国

米国のエネルギー政策に関して、筆者が特に注目しているのは、トランプ氏が石破首相との共同記者会見※28)の場で明かした「日本が米国産LNGの供給を依頼したが、バイデン政権がそれを断った」という重大発言である。

2024年1月のJETRO短信※29)によると、確かにバイデン政権は「LNGの新規承認を一時停止することで、気候変動の危機を、われわれの時代の存亡に関わる脅威であることと認識する」として、LNG輸出に待ったをかけた。

それにしても、最重要な同盟国からの依頼を断るとは、いかがなものか。しかも、エネルギー供給という国家の安全保障の根幹に関わる事案である。2月9日のNHK記事※30)によると、そもそも米国は過去50年にわたってLNGを日本に供給していたのだから、新たな環境破壊を伴わない単純な継続供給の話ではないのか。

米国のLNG輸出停止は、2024年1月にFTA非締結国向けにおこなわれたようであるが、それはつまり日本やEUを含む。当時、バイデン氏の判断に対して多くの議員が反対し、撤回要望書※31)も提出されたようである。この要望書には現トランプ政権のJ・D・ヴァンス副大統領を始め、26名が署名している。