麻薬がメキシコから米国に流入するイメージはあるが、ここにカナダも加えられていることに筆者は驚いた。2024年度の国境での押収量※9)を調べてみると、メキシコ国境の9.6トン(96.6%)に対してカナダ国境は19.5㎏(0.2%)と少ないが、確かに流入している事実を確認することができた。
カナダからの流入量がメキシコに比べると遥かに少ないことを理由に、「トランプ氏は大袈裟だ」という論調の記事が散見される。確かに、カナダをメキシコと同列にみなす姿勢は厳しいと言えよう。これは米国の対カナダ貿易赤字が年間18兆円(2023年)※10)もあることや、トルドー首相が積極的にDEI(多様性・公平性・包括性)政策を推進してきたことなどが影響しているのかもしれない。
カナダ同様、メキシコも米国へのフェンタニルや不法移民の流入を防ぐために、国境警備を強化することに合意した※11)。ともすれば、メキシコ側にだけ問題があるような印象を持ちがちだが、決してそんなことはなさそうである。2月7日にシャインバウム大統領が行った記者会見*¹²では、そのことを明確に表明している。

シャインバウム大統領
メキシコ政府HPより
米国側にも課題がある
シャインバウム大統領が米国に対して問題提起したことは、主に2点だ。
一つ目は、フェンタニルが米国内に密輸された後の経路と、カネの流れが不明である点についてである。もし米国内でフェンタニルの流通と販売が組織的に行われているのであれば、米国はその対策強化を同時におこなってゆく必要があるだろう。
もう一点は、逆に米国からメキシコへと絶え間なく流入してくる銃器の問題である。シャインバウム大統領は、オバマ政権時代に実施された”Fast and Furious”作戦を「蛮行」と批判し、軍用銃器さえも越境していることを問題提起した。
”Fast and Furious”について調べてみたところ、CNNやabcNEWSを始め、大手メディアも当時報道していたようだ。2012年6月のabcNEWS※13)によると、