また、南国の透明な海は人間の目には美しく生命に満ちた楽園のように感じられますが、科学的に見ると「栄養が乏しい海」でもあります。
植物プランクトンの成長に必要な栄養塩は、通常陸地から川を通じて海に注がれるため、大陸から遠く離れた太平洋の真ん中は極端に栄養不足の状態です。
こうした場所では食物連鎖の出発点が限られているため、実は魚たちにとっては厳しい環境で、生き残りをかけた競争はとても激しいのです。
そうした環境では、通常の海とは異なる戦略が必要になってきます。色彩で「目立つこと」も、魚たちの重要な生存戦略の1つであり、仲間とのやりとりや、敵との駆け引きに繋がっているのです。
では具体的に、派手な体色はどんな戦略を生むのでしょうか?
透明な海で進化した魚たちの色彩戦略
まず透明な海では色彩が水中のコミュニケーション手段として機能しています。
たとえば、クマノミは縞模様の数を認識していて、同族かどうか区別しているという報告があります。
クマノミは縞模様の数で攻撃対象を決めていた!それってつまり…
また、ミノカサゴのように毒を持つ魚は、派手な色によって自らの危険性を周囲に伝えることで、捕食されにくくなるという“警告色”の機能を果たしています。
さらにはこの有毒種にそっくりな色合いを真似ることで自らを守る“擬態”の戦術を取る魚たちもいます。
また他の魚の体表を掃除する「クリーナーフィッシュ」として知られるホンソメワケベラは、青と黒の縞模様が目印となっていますが、ニセクロスジギンポという魚はその姿と動きを模倣して、自分を掃除魚と誤解させることで捕食されるのを避けたり、勘違いして近づいてきた魚のヒレを食べるという行動を取ったります。

このように、海が透明で色が機能する世界だからこそ、それを利用した騙し合いも進化しており、水中の色彩は単なる美しさを超えた複雑な意味を帯びているのです。