その結果、2022年時点でヨーロッパには少なくとも2万1500頭のオオカミが生息していることが判明しました。
これは2012年時点の推定値1万2000頭と比べて、約58%の増加に相当します。
分析対象となったほとんどの国でオオカミの個体数は増加しており、過去10年間で減少が確認されたのはたったの3カ国のみでした。
オオカミは現在、ドイツやフランス、スペイン、ポーランド、イタリアなど広い地域に定着しており、特にドイツでは2000年に1群れしかいなかったオオカミが、2022年には184群れと47のつがいにまで増えています。
このように、ヨーロッパの大地にかつて消えかけた捕食者が戻ってきたのです。
ではなぜ、これほどまでの復活が生じたのでしょうか。
なぜオオカミは復活できたのか? その影響と未来への課題
オオカミの復活の背景には、いくつかの重要な要素が存在します。
第一に、法的な保護措置の強化が挙げられます。
オオカミはEUの生息地指令やベルン条約の保護対象種として分類されており、多くの国で厳格な保護措置が講じられています。
さらに、LIFEプログラムをはじめとする国際的な資金援助や、保護団体による働きかけが、保護活動の推進力となりました。
第二に、オオカミ自身の高度な適応能力も大きな要因です。
人口密度が高く、農業や都市化が進む環境にもかかわらず、オオカミは人間の目を避けつつ生活範囲を広げていきました。
オオカミが元々持っていた適応能力は、保護措置の強化により、一層力を発揮するようになっています。
また、近年は科学的なモニタリング手法の向上も見逃せません。
DNA分析やGPS追跡装置、カメラトラップを用いた調査によって、個体数や分布の正確な把握が可能になり、保全策の改善にもつながっています。
