バンコクで倒壊したビルは中国の「おから工事」?

先日のミャンマー地震の影響で、バンコクで建設中であったタイ政府のオフィスビルが、まるでCG映像でも見ているかのように見事に倒壊した。しかも、無数の超高層建築が立ち並ぶバンコクにあって、これが唯一倒壊したビルなのである。

これまで地震がないといわれていたバンコクでは、今回は想定外の地震であり、日本に較べて耐震基準が緩い超高層コンドミニアムにも大きなダメージを与えた。しかし、そうはいっても建物倒壊というような深刻な話はこれだけである。

例えば、これは筆者が住むタイの大手デベロッパーが建てた築10年の28階建コンドミニアムの館内であるが、運悪く被害が出た部屋や共用部の写真である。

しかし、被害といってもモルタルが剥がれてタイルが落下したり、共用部の天井や壁の表面にヒビが入った程度で、躯体に影響が出るというような重大な被害は出ていない。

一方、その後の現地報道によると、実は倒壊した当プロジェクトはタイの大手ゼネコンであるITD(イタリアン・タイ・デベロップメント)と、中国中鉄公司なる中国国営企業のJVによるプロジェクトということがわかったのである。

そこでタイ政府は現在、たくさんの犠牲者を出したこの事故の原因究明を急いでおり、設計図だけでなく現場で使われていた鉄筋やコンクリートなどの資材を検査中であるが、鉄筋はタイの高層建築の建築基準を満たしていない不良品が使われていたことがわかった。また、今後さらにいろんな問題が発覚しそうなのである。

タイに入り込む中国企業

ところで、筆者はバンコクで不動産ブログを10年以上書いてきているが、このITDはタイ最大手のゼネコンではあるものの、昨年初めに144億バーツ(約600億円)の社債償還ができず倒産寸前になり、債権者集会で2年間の償還延期を求めたことを当時のブログでも書いた。

実際、これまで数多くの国家プロジェクトを手掛けてきたITDは、日本でいう清水建設や鹿島建設に相当するタイ最大のゼネコンであり、本来こんなお粗末な工事はしない。