そんな中、『ロード・オブ・ザ・リング』の俳優たちが数千万円単位のギャラだったというのは、まさに“異例”と言ってもいいだろう。

 

3本同時撮影という異例のスケジュール

ではなぜ、それほどまでに出演料が低かったのだろうか。その背景には、ちょっと変わった撮影スタイルがあった。

『ロード・オブ・ザ・リング』三部作は、当時まだあまり例のなかった“3作品一括撮影”という手法で作られていた。普通なら、1作目のヒットを受けて次作の契約を見直すことができるが、このシリーズでは最初にまとめて契約を結んだため、あとからギャラを上げる交渉の余地がなかったのだ。

イライジャ・ウッドは、「僕たちは3本の映画を一気に撮った。だから、一作ごとに契約を更新してギャラを増やすみたいなチャンスはなかったんだ」と説明している。また、製作会社のニュー・ライン・シネマにとっても、当時は大きな挑戦だったそうで、「あれだけの規模の作品を一気に撮影するのはリスクが大きかったから、俳優たちへのギャラを抑えて実現したんだと思う」とも語っている。

とはいえ、イライジャ・ウッドは「お金よりも、作品の中で何を得られたかが大事だった」と語る。『ロード・オブ・ザ・リング』は、単なる映画ではなく、俳優たちの人生を変えるほどの経験だったのだ。