高塩分と低塩分では異なる細菌叢を示すほか、代謝産物の組成の違いを発見しました(Changes in Metabolite Concentrations and Bacterial Community of Salted and Fermented Squid Shiokara During Processing)。この成果は、2024年12月23日付で、アメリカ化学会の食品科学技術誌『ACS Food Science&Technology』に掲載されたといいます。

低塩分と高塩分の違い

本研究では高塩分(塩分12パーセント、25度保存)と低塩分(塩分5パーセント、5度保存)の2種類のイカの塩辛を比較。代謝産物の組成と細菌叢の違いを分析しました。

高塩分で風味が増す

代謝産物の組成の比較では高塩分製法では発酵、自己消化中に遊離アミノ酸、ジペプチド、有機酸などが増加。伝統的なイカの塩辛特有の風味を形成することが確認されました。

しかし、低塩分製法ではこれら代謝産物の変化は抑制され、製造過程中の変化が小さいことがわかりました。

低塩分は菌の変化が少ない?

細菌叢の比較でも、高塩分製造と低塩分製造で違いが見られたそうです。

製造初期においてはどちらの製法でもVibrio属やPsychrobacter属が見られましたが、高塩分製造では発酵が進むにつれてStaphylococcus属が優占。低塩分製法では細菌叢の変化はほぼなく、Vibrio属が優占したままでした。

また、官能検査による評価では高塩分製造のほうが低塩分のイカの塩辛よりも甘みが弱い一方、うま味やこく味が強いとされました。

低塩分で風味豊かなイカの塩辛へ

この研究により、伝統的なイカの塩辛と低塩分で作られたイカの塩辛の代謝産物の組成と細菌叢の変化が明らかになりました。

今後は、伝統的なイカの塩辛が持つ独特な風味を生成する成分の特定を目指しているといいます。