しかし、60代、70代が100万円を手にしても、若者ほど付加価値を出すことは極めて難しい。資産運用をするにもすでに運用期間は非常に短く、そもそもリスク資産運用自体が不適格である。
以上の要素を考えると、特に自己管理がしっかりでき、若い頃に自己投資をして自分の価値を高めていこうという気概がある人にとっては、年金制度が個々人の資産形成の自由度を強く制限していると感じる人もいる。
現代人に年金は不要
有名なDIE WITH ZEROという本で紹介されている一節に、「ほとんどのアメリカ人は死ぬ直前、最もお金持ちになる」と紹介されている。倹約気質の日本人はなおさらこの傾向が強い。
年金というのは老後を考えず、現役時代に資産を食いつぶしてろくに貯蓄できず、人生が詰むことを想定して作られたものだ。
しかし、実際には現代人は昔に比べて遥かに慎重になり、思慮深く、将来を計画的に行動するようになったことで、わざわざ年金というシステムを用意しなくても個々人が自分で老後の資産を考えられるようになっている。
中には年金制度をありがたく思う人もいるかもしれないが、「ハッキリいって余計なお世話」と感じる人は多いのではないだろうか。
もちろん、年金が不要と感じる人も増えている一方で、計画的に老後資産を形成できない人々にとっては依然として重要な制度ではあるだろう。問題はその要否を感じる人のバランスが大きく崩れて来たことにある。
また、年金は「長生きリスクのヘッジ商品」という見方をする人もいる。確かに現代は「短命リスク」より「長生きリスク」の方が圧倒的に多くの人に脅威と受け取られる時代であり、今ほどピンピンコロリが望まれる時代もないだろう。
しかし、これも冷静に考えれば違った見え方になる。まったく働くことができず、しっかりためた貯蓄もすべて食いつぶし、ただ生命維持をするためだけに莫大な医療コストをかけつづけるような状況になってまで「できる限り、国の税金を全力投資してもっと長生きしたい」と今の現役時代は考えるのだろうか?