公務を担う人材不足(公務員に優秀ななり手が行かない)、地方の衰退、少子高齢化。日本はその筆頭だが、わが国を含む先進各国が直面している一見関係ないこれら3つの社会課題には、全て、その根っこに同じ原因が横たわっている。すなわち、自己犠牲など、合理的損得主義から見ると理解しがたい人間の行為、利他の精神が個々人レベルでも、社会レベルでも減退してしまっているという根深い問題だ。
損得で考えれば、①相対的に賃金が安くなっているにも関わらず責任が重い(何かあるとすぐ叩かれる)公務員は、職業として選ばれなくなるし、②一般的に賃金水準が低く、衣食住でも都市部に比べて見劣りがする各地(故郷)に住むという選択肢はないし、③子どもを産み育てるという、時間や労力を奪われ、コストもとてもかかる行為を選ぼうとはならない。
自己犠牲の精神をもって、国や社会、各地の自然や歴史や文化、自らの家系を存続させよう、という強い意志を持った一定数の人たちがいなければ、家も地域も国や社会システムも次代に繋がって行かない。
例えば、トランプ流の「ディール中心主義、合理的損得主義」は、それが広がり過ぎると、様々な事象を全て損得・合理で解決しようとする短期的メリット至上主義の蔓延に繋がりかねないと危惧している。トランプ的あり方の一般化は、現代社会を根本から崩壊させかねない危険性をはらんでいる。
2. トランプ現象から学ぶべきこと
ただ、トランプ批判目線から見て多少厄介なのは、政権の志向はともかく、トランプ大統領自身は、大きなところで、必ずしもその合理的損得至上主義からだけ動いているわけではないように見える、という事実だ。
もちろん、トランプ大統領自身に全く私利私欲がないかと言われれば、恐らくそんなことはないであろう。ウクライナやパレスチナでの停戦の促進に関しては、自らのノーベル平和賞受賞を見据えているとも言われているし、そもそも、大統領職に就いたのも、様々な訴追などから逃れるためという私利私欲が原動力だという説もある。何よりトランプ大統領自身が、一種の虚栄心の固まりで、とにかくスターダムにのしあがりたい、目立ちたいという自らの欲の実現を常に目指していると見えなくもない。