
トランプ大統領SNSより
1. トランプ現象の最大の問題
トランプ大統領の勢いが止まらない。
現地ではFlood the Zone(情報、打ち手の氾濫)と表現されることが多いようだが、様々な分野でこれまでの政策をひっくり返すような、或いは極端に推し進めるような大改革を進めている。いわば改革のオンパレード状態である。
ついに教育省まで廃止するようだが、連邦政府には大ナタを振るい、日本を含む各国の主要対米輸出品には次々に重い関税をかけ、ウクライナやパレスチナなどでは、時に当事者の意向そっちのけで強引に停戦を進めている。
その他、環境・エネルギー分野では、パリ協定からの離脱をはじめ国内のオイル・ガス産出重視へと政策の大転換をし、不法移民の取り締まりはより強固となり、書き出すとキリがないが、グリーンランドへの介入や留学生向けの奨学金の大幅なカットなど、ほぼ毎日のように、トランプ劇場の新たな目玉施策が報道される。
あたかも新手のエンタメのように、様々な大統領令を楽しんでしまっている我々だが、果たして、こうしたトランプの各種政策・大改革はそもそも正しいのだろうか?そして、トランプ政権は、このまま成功を収めるのであろうか?
私見では、多くの政策の方向性は正しいとは思えないし、政策の当為とは別に、トランプ政権は早晩立ち行かなくなっていくのではないかと考えている。
その兆候として、典型的には、関税の引き上げになどによって、各種市場で米国経済の先行きに対する懐疑的な見方が支配的となり、ダウ平均株価やドルが値を下げて来ていることが挙げられる。また、政府効率化を進めるイーロン・マスク氏の改革への反発が、改革対象の連邦政府や世論一般からだけではなく、政権内部からも聞こえはじめているが、大改革を進める上でのマネジメント面での不安もつきまとう。
しかし、私が何より問題だと思っているのは、トランプ政権のディール中心の政策遂行のやり方そのものである。合理的損得ばかりを気にして、自らが損しないことばかり考えて、相手と取引をする。内政も外交もそればかりという印象だ。ビジネスならともかく、政治がそれで良いのか、という思いを禁じ得ない。