一方、日本と韓国の民族と言語のルーツについては、初版の出版から10年のあいだにゲノム分析が進化し、「日本人のルーツ」について、縄文人に後発の弥生人が渡来して多数派になったという『二重構造説』が有力になり、縄文人が稲作を習得して変化したと主張する少数説と対立していた。
それが、三千年ほど前に、遼寧省西部の遼河西岸の民族が初歩的な農業と日韓両国語の母語をもって南下して朝鮮半島や日本列島に住みつき、さらにその後に中国などから稲作農民がやってきたという『三重構造説』、つまり弥生人の渡来を二段階に分ける説が唱えられた。
これによって、日本語と韓国語がなぜ似ているのかといった多くの謎が解ける。ただし、それはその西遼河人が日韓両国民の主たる先祖であることを意味するものではないし、弥生人の第二期の渡来が、従来「弥生人の渡来」と言われていた時期なのか、古墳時代なのか、また厳密にどこから来たかも確定していない。
とはいえ、日本語と韓国語のルーツについては、だいたいこの説で説明がつくと思うし、今後は「三重構造説」の精緻化によって、真実がだんだん明らかになってくると思うので、改訂にあたってはそれを採り入れた。
「天皇家は朝鮮半島から来た」などという説を、立派な社会的地位のある人が言うことがあるが、何の根拠もない。
また、日本は中国に対して新羅・高麗・朝鮮王国と違って完全な従属関係にあったことはなく、その論理的帰結として、日本と半島の国の対等外交は成立しなかった。「韓国と対等だった」と言えば向こうは喜ぶので、そうしてあげたい衝動にかられることもあるが、それは中国とのあいだの歴史認識も歪めるので、賢明ではない。

韓国 ソウル Marco_Piunti/iStock
日韓併合を含めた近代の歴史について、日本が反省すべき点が多いことは否定できないが、外交関係でどちらかが一方的に悪いということは普通ない。
そうした点も含めて、むしろ韓国の人の反応を気にするより、欧米など第三国の人たちから見て「客観性に欠ける」とか「それはおかしい」と思われないように注意するほうが大事ではないかと思う。