なお実釣開始前、吉田は使うであろうウキのエサ落ち目盛は事前に調整済み。ゆえに交換の手間も最小限でエサ打ちは即座に再開。よって中断による釣況変化は、ほぼほぼ無視していいレベルだったことを付け加えておきたい。
それってアタリ?
吉田の釣りを見ていると、それってアワせるアタリなのと思える動きが何度もあった。「だからアワせているんです」と吉田は当然のような顔だったが、記者にはアタリに見えなかった。ところが現実は、そのような微妙な動きで何枚もヒットさせていた。
こういう時に動画なら説明もしやすいのだが、言葉で表現すると誤解を招くかもしれないことをあらかじめ忠告しておきたい。

どんな動きだったかというと、いわゆるナジむ速度の変化だ。
たとえば、触りにより下バリがアオられてトップが数mm持ち上がったとしよう。そこから通常であれば食わせ(下バリ)の重さによって再びナジミに入る(オモリの真下に移動する)はずだが、この入る速度が想定より変化すると大抵の場合、吉田はアワせていた。
聞きアワセ的にそっとアワせるのではなく、ズバッと決めた時と同様のアワセ方だ。つまりアタリだと確信してアワせていることになり、実際そのようなアタリで数枚はモノにしていた。
これってハリスが張っていないからこそのアタリってこと?
吉田康雄
「はい!このアタリを取りやすくしたいがためにグラスムクのトップを使っているんです。ズバッと入るアタリは誰でも取れますが、それだけを狙っていては人より数は釣れません」
つまり、食いアタリにはそのような微妙な動きも含まれているってことだよね?
吉田康雄
「はい。とくに厳寒期の釣りでは大いにあり得ることであり、これをアタリとして認識できるような動きを出してくれるウキと、アタリを見きわめる目とアワセが数釣りの世界では求められるんです」