「平和を望む人物には見えなかった」とのトランプ発言の裏には、「なぜ俺を信頼して任せないのか」とのトランプの思いが滲む。米国を筆頭とする西側諸国の支援なしには自国を守れないというゼレンスキーが置かれた立場を、彼は判っていないとの思いである。

トランプにしてみれば、NATO諸国の支援の多くがロシアの凍結資産の運用益の「融資」である一方、バイデン政権が行った膨大な支援は米国民の税金の無償供与だ、という思いもあろう。その一部返済をウクライナの資源開発によって賄おうとする計画なのだから、「さっさと署名しろ」という訳である。

ウクライナの地下資源の多くが、目下のロシア占領地域に賦存していることは拙稿で触れた。だから米国には見返りがあまりない、との見方もある。が、トランプにとっては、だからこそ①の円滑な「成約」こそが②のプーチンとの交渉のカードになる、と考えているのではなかろうか。

ウクライナは米国から有償の支援を受け取る準備がある
2月27日の『Wedge online』に「火事場泥棒トランプが狙うウクライナのレアアース」との見出し記事が載った。記事の著者は北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター教授の服部倫卓氏で、在ベラルーシ共和国日本国大使館専門調査員など...

ゼレンスキーは『Foxニュース』のインタビューで、トランプとの関係修復の可能性につき「もちろんだ」と答え、「このようなことになって申し訳ない」と述べた(前掲『ロイター』)。2日の欧州首脳会議後の『BBC』取材にも、鉱物資源協定に署名する準備ができているとし、「交渉のテーブルの上に置かれている合意文書は、当事者の準備が整えば署名される」と述べた

ここ10日間で米国は、ヴァンス副大統領がウクライナの商務長官・国務長官と会談し、ルビオ国務長官もウクライナ外相と3度話をした。いずれもトランプ大統領とも電話で協議した上でのことだ。その会談を決裂させた責任は偏にゼレンスキーの短慮にある。