特に北海道のマツカワは人工種苗の放流により大幅に資源を回復させた事例として有名。1970年代に資源が激減したマツカワは1987年の厚岸町の放流に始まり、2006年からは100万匹以上の人工種苗が放流が行われるようになりました。

放流の効果もあり、2008年には資源が大幅に回復。1994年の漁獲量は1.3トンでしたが、2018年の北海道におけるマツカワの漁獲量は150トン以上を記録しています。

ホシガレイもマツカワと同様に人工種苗の放流が行われており、近年、2万トン前後の漁獲量がある福島県では1993年に人工種苗の試験的な放流が行われました。2003~2006年の福島県主要8市場におけるホシガレイの放流個体の割合は90パーセント前後と非常に高く、人工種苗が漁獲量の大部分を賄っていたのです。

一方、2018~2020年には20万匹前後のホシガレイを放流したものの、放流個体が占める割合は6.2パーセントと非常に低いものでした。これは天然個体の増加を示唆しているとのことで期待が高まっています。

人工種苗の問題点

マツカワやホシガレイでの成功例があるように人工種苗の放流は資源を回復する方法の1つとして広く用いられています。

2015年の時点で70種にも及ぶ人工魚が約15億匹放流されており、神奈川県や鹿児島県のマダイは40パーセントが放流個体だったそうです。

幻のカレイこと『ホシガレイ』の資源量が回復傾向も「遺伝的多様性」低下の懸念もヒラメの稚魚(提出:PhotoAC)

しかし、人工種苗の放流は資源を回復させる一方、天然資源の遺伝的多様性を低下させるリスクが指摘されています。そのため、近親交配の回避や資源調査、遺伝的多様性のモニタリングが定期に必要と考えられているようです。

高級カレイとして名高いマツカワとホシガレイですが、近年は放流により徐々に資源が回復しているのでした。また、この2種は養殖の研究も進んでおり、近い将来、安定的な供給が実現するかもしれません。

参考