しかしガザ地区内の居住者は、イスラエル企業に雇用されてイスラエル政府から特別に許可を取るような場合でなければ、ガザから出ることを許されない。海に面しているが、船で沖合に行ける距離も制限されており、海から外部に出ることも許されていない。エジプトを通るルートについても制限されている点については、同じだ。ガザが「天井のない監獄」と言われていた所以である。

また、イスラエルは、2005年以降、2023年以前にも、ハマスの拠点のみならず、アルジャジーラ支局など反イスラエル的と思われる施設や人物に対する軍事攻撃を繰り返していた。

2023年10月以降は、ガザ地区全域が廃墟となる中で、住民たちは依然としてガザの外に出れないため、ガザ地区の中だけで逃げまどっている。監獄に閉じ込められ、断続的に暴力を振るわれる人物が、管理者の統制下にあるのは自明なので、ガザについても世界の大多数の人々は、2005年以降もイスラエルの占領体制下にあるとみなしているわけである。

7月19日のICJ(国際司法裁判所)勧告的意見と、9月18日国連総会決議は、この見解を正式に法的に正しい見解として採用している。ガザは、入植活動の対象ではなくても、「パレスチナ被占領地」の一部であり、パレスチナ人民の自決権行使の不可欠の構成要素である。

ICJ勧告的意見と国連総会決議は、イスラエルの「パレスチナ被占領地」からの撤退を求めているが、これにはガザからの撤退も含まれる。

イスラエルの「継続的な違法な存在(continued unlawful presence)」は、1967年から続いていると考えられているため、2023年10月以降の軍事作戦の停止は、「違法な存在の終了」の一部ではありえても、十分条件にはなりえない。ガザを「屋根のない監獄」の状態から解放することが、イスラエルの「継続的な違法な存在の終了」である。

前回の記事でも書いたが、「占領」概念それ自体は、必ずしも自動的には違法だとは断定できない状態を指す概念である。なぜなら、たとえば合法的な自衛権行使の結果として、あるいは集団安全保障に基づく行動の結果として、一時的に他国の領土を「占領」することは、起こりうる可能性があるからだ。