地方創生が「まち・ひと」を「しごと」の前に掲げたのは良い並びであり、その意味でも地方創生プロジェクトは内政の要として継続して欲しい。
地方創生10年の経済的帰結
ただし、この10年で地方経済が改善したという統計を探すのは難しい。『総括文書』にはいくつかの地方都市の成功例が示されているが、ミクロの物語にとどまっている。
私(濱田)が、かつて関与していた『景気ウォッチャー調査』でも、東京から遠い地域ほど(北海道、北東北、四国、南九州)停滞は見て取れる。
東京への人口集中とその帰結
「地方創生の10年」の反面を象徴するものとして、東京への人口集中がどうなったか見てみよう。
依然として転入超過は止まらず、東京は全国からの人口を吸収し続けている。2023年は11万4000人が移住したが、内訳では20-24歳が約8万人であり、さらに若い年齢層を男女別にみると女性が多い。東京は全国から人を集めているが、最近の傾向は、他の大都市圏からの流入が目に付く。
また、企業数(資本金10円億以上)を見ると、東京には51.9%が集まっている。地方創生政策の一環として「地方拠点強化税制」というのがある。首都圏から、地方に会社を移せば税制優遇が得られるのだが、この件数は始まった2015年も、2022年も70件程度である。これによる雇用は10年合計で4000人であり、やはり少ないと言わざるを得ないだろう。
「地域活性化起業人」
地方創生に関連しては、「地域活性化起業人」という2014年に始まった制度もある。東京の大企業が地方自治体に人を派遣し、現地での起業を進めるというのが眼目になっている。当初は20人だったが、2023年には779人になった。スタートアップを地方でやろうといっても人材不足が悩みの種だから、やや補助金まみれの感はあるが、とりあえずは人の移動促進にはなるだろう。
デジタル化は『総括文書』で繰り返されたが、そのための人材は約半分が東京にいるし、情報通信業界全体の46%は東京にある。そのため「デジタル田園都市国家構想」なども宙に浮いてしまっている。