前述の町田陣営の狙いを察知したのか、時間の経過とともに湘南の攻撃の初手がロングボールへ偏っていく。特に前半は町田陣営にロングボールを跳ね返されたうえ、田中が敵陣へ侵入した際も町田2トップのいずれかが帰陣してマークに付いたため、湘南のパスワークは困難を極めた。

こうした状況下でも湘南の攻撃配置には工夫が見られ、前半18分に右ウイングバックの鈴木雄斗が町田左サイドハーフ相馬の斜め後ろに立ち、味方センターバック髙橋からのパスを受け取っている。髙橋に寄せようとした相馬の斜め後ろを突く好プレーで鈴木雄斗が攻撃の起点となると、その後髙橋、キム、鈴木淳之介の順でパスが繋がる。最終的には鈴木淳之介のパスを受けたDF吉田新(左ウイングバック)がゴール前へクロスボールを送っている。このラストパスはシュートに結びつかなかったが、湘南が攻撃のリズムを掴んだ瞬間だった。

前半19分には、自陣右サイドでボールを奪った鈴木雄斗から湘南の攻撃が始まり、ここでも鈴木淳之介から吉田へのパスが繋がっている。この場面で相手サイドハーフとサイドバックの中間に立ち、どちらにも捕捉されない状況を作っていた吉田のポジショニングも良好で、同選手のクロスに反応したFWルキアンがヘディングシュートを放っている。町田GK谷晃生にシュートを阻まれたものの、ウイングバックの立ち位置の良さから生まれたビッグチャンスだった。

また、片方のサイドへ相手のパス回しを追い込みたい町田にとって、正確なロングパスが特長の鈴木雄斗は脅威に。前半26分には鈴木雄斗から逆サイドの吉田へのロングパスが繋がっており、町田は持ち前のハイプレスを無力化されている。町田に攻め込まれる時間帯もあったなかで、湘南の両ウイングバックが反撃の口火を切ったこと。これが同クラブの勝因のひとつだ。

鈴木章斗 写真:Getty Images

湘南が突き詰めるべき撤退守備