ハニヤ氏の死後、シンワル氏が政治局長に就任したと報じられている。ハマス側も停戦交渉を見限って、よりいっそう強く徹底抗戦の体制に入ったということだ。ネタニヤフ首相は、むしろこの流れを煽っている。

さらに言えば、イランがイスラエルへの報復を予告しながら、まだ実行に移していない。イランは、イスラエルへの挑発行為に対して、万全の準備をして、手段を精査して、報復を実行しようとしている。

ネタニヤフ首相としては、挑発に乗って準備を怠ったまま軍事報復をしてくるイランが、最も望ましい。そのイランの行動を理由にして、さらなる支援をアメリカに要請する、という流れを狙っているはずだからだ。イスラエルとしては、早期に報復を開始するように、繰り返しイランを挑発しているような状況だ。

ウクライナを見てみよう。ウクライナは、ロシア領クルスク州に入った軍事作戦を開始した。国境から10キロほどの地点にある町スジャを占拠し、さらに20~30キロにわたって進軍した。さらにクルスク州の東にあたるベルゴロド州にも侵入したようである。

宣伝合戦が激しく、事実関係を確定的に把握するのは簡単ではないが、いずれにせよ軍事的に合理性のある行動なのかどうかは、必ずしも明確ではない。ロシアに心理的衝撃を与え、ウクライナ側の士気を高める効果を狙ったものとも言えるが、時間がたてば、ウクライナ側のリスクも高まる。ゼレンスキー大統領の発言などを見ると、それでもアメリカをはじめとする支援国へのアピールとしての意味を見出しているようだ。

ロシア・ウクライナ戦争が、ロシア領内でも広がっていることが既成事実化すれば、アメリカをはじめとする武器支援国がウクライナに課しているロシア領内への攻撃に武器を使用する際の制限は、意味を失っていく。ウクライナとしては、さらなる武器支援と同時に、武器使用の制限を外してもらいたい。ロシア領への攻撃は、そのための手段とみなされているようだ。