この試合、湘南はDF吉田新とMF鈴木雄斗の両ウイングバックが味方センターバック付近へ降りる場面が多かったが、ここへの横パスではなく、2インサイドハーフへの縦パスや最前線へのロングパスを主に選択。下がってボールを受けようとするウイングバックを囮(おとり)とする攻撃が、特に試合序盤は効果的だった。

ただ、時間の経過とともにセンターバックから自陣へ降りたウイングバックへの横パスが増え、福岡の最前線からの守備を掻い潜れなくなったことは改善すべき点のひとつだろう。前半24分には、キムの横パスを自陣後方タッチライン際で受けた吉田が相手DF小田逸稀のプレスを浴び、ボールを奪われる。小田のクロスに反応した佐藤凌我のヘディングシュートが枠外に逸れたため事なきを得たが、あわや失点の場面だった。

ウイングバックがこの位置でボールを受けた場合、自身の傍にはタッチラインがあるため、必然的に180度方向にしかパスを出せなくなる。これに加え相手サイドハーフやウイングバックのプレスを浴びれば、パスコースは更に無くなる。味方センターバック付近へ降りたウイングバックには極力パスを出さず、基本的に囮として利用するのが得策だろう。

茨田陽生 写真:Getty Images

効果的だった茨田の立ち位置

後半も湘南のビルドアップ(GKや最終ラインからのパス回し)のやり方は大きく変わらず。降りてくるウイングバックが囮となり、センターバックからの縦パスやロングパスが攻撃の初手となっていた。

攻め上がる左ウイングバック吉田と味方センターバックの間でボールを受けようとする茨田の立ち位置も絶妙で、同選手が湘南最終ラインと前線を繋ぐ役割を度々担っている。この試合、攻撃が自陣後方からの縦パスやロングパスに偏っている印象があったため、欲を言えばこの位置に立つ茨田を効果的に使った攻撃をもっと見たかった。


池田昌生 写真:Getty Images

茨田、池田の交代で攻撃停滞