2020年中国の新規上場企業が545社にものぼる
中国金融情報サービス会社のwindが発表したデータによると、2020年中国企業の新規上場件数は545件で直近6年間での最多を記録した。上場による資金調達規模は8912億元(約14兆6000億円)で過去最高を記録した。
上場証券取引所分布を見てみると、中国本土(上海と深セン証券取引所)での上場は394社で全体の72%を占める。その中でもハイテック企業向けに2019年に設立した上海取引所の新市場「科創板」へのIPOが特に目立った。
香港証券取引所での上場は114社で全体の21%を占める。京東(JD)やネットイース(網易)など米市場で上場した中国企業の香港での重複上場が相次いだ。
香港は18年に上場規則を緩和したことや、米中対立激化により、米国で上場する中国企業の「香港回帰」の動きが活発化している。
米市場での上場は37社で全体の7%を占める。音声配信のlizhi(荔枝)など、インターネット企業の米市場上場が多い。
資金調達規模から見ると、1位の半導体受託製造の中芯国際(SMIC)が「科創板」で重複上場し532億元(約8700億円)を調達した。次いで米市場で上場した中国EC2位の京東が香港で重複上場し、316億元(約5200億円)を調達した。中国IT大手のネットイースも香港で重複上場し、220億元(約3600億円)を調達した。
以下2020年中国新規上場企業の一部を紹介
■中芯国際(SMIC)
中国半導体受託製造最大手の中芯国際(SMIC)は2020年7月に「科創板」に上場した。香港市場との重複上場となる。同社は2004年にニューヨークと香港の両取引所にて同時上場したが、2019年にニューヨーク市場からの撤退を表明している。
2018年の世界半導体受託製造市場の売上ランキングでは中芯国際は4位にランクインし、中国本土の企業としてはトップだった。
■POP MART
フィギュアメーカーのPOP MART(泡泡玛特、ポップマート)は2020年12月に香港証券取引所に上場した。上場当時の時価総額は1065億HKD(約1兆4300億円)であった。
同社は中身が見えない「盲盒(ブラインドボックス)」仕様のアートトイ販売を展開している。2019年の売上は16億8300万元(約276億円)で2017年の10倍以上、純利益は4億5110万元(約74億円)で2017年の約300倍であった。2017年以降の3年間で売上を10倍にも伸ばしたのだ。
■YATSEN(逸仙電商)
中国人気コスメブランド・完美日記(Perfect Diary)を運営する「YATSEN(逸仙電商)」が2020年11月にニューヨーク証券取引所へ上場した。
完美日記は「RED(小紅書)」や「weibo」などの新興プラットフォーム上での販売とマーケティングに注力し、短期間で若年層女性達に爆発的な人気となっている。その驚きの成長スピードに注目が集まっているのだ。
2019年のYATSENの売上高は31億元(約508億円)で、2018年の6億元(約98億円)より約377%大幅増加した。2020年Q1~Q3の売上高も32億元(約525億円)で前年同期より73%増加しており、高い水準の伸び率を維持している。
■名創優品
偽日本風で知られる中国の雑貨小売ブランド名創優品(MINISO)が2020年10月にニューヨーク証券取引所へ上場した。中国市場を中心に事業を展開し、海外進出も行っており、現在では80か国にまで広がりをみせ、4200店舗を有している。2019年のMinisoの収益は14億ドル(約1474億2000万円)に達した。
同社は化粧品や小型家電など雑多なアイテムを販売している。商品の包装には日本語が書かれており日本風に見えるため、日本メーカーだと勘違いされることが多い。無印良品やダイソーのパクリだと批判する声も多い。
■京東ヘルス
中国EC大手京東グループ傘下のヘルスケア企業「京東ヘルス(京東健康)」が12月に香港証券取引所へ上場した。新型コロナを追い風にオンライン医療業界が急速な成長期を迎え、京東ヘルスはこのタイミングを期にIPOを決断したのだ。
京東は2013年から保健品のネット販売を開始し医療・健康業界に足を踏み入れた。2016に医薬品EC事業を開始し、2019年に京東ヘルスを成立、子会社として独立し運営を始めた。現在は医薬品EC、オンライン医療、ヘルスケアサービスなどのサービスを提供している。2019年の収益規模は100億元(約1641億円)を超え、黒字化を果たした。
■小鹏汽車と理想汽車
中国EVメーカーの理想汽車は2020年7月にナスダックへ上場した。時価総額は139億米ドル(約1兆5000億円)。その直後の8月に小鹏汽車もニューヨークへ上場、当時の時価総額は150億米ドル(約約1兆6000億円)に達した。NIO(蔚来)を含め米市場で上場した中国EVは3社に拡大した。
コロナ禍の影響を受けたにも関わらず、市場は電気自動車業界に好意的な反応を示した。テスラの時価総額がトヨタを超え、世界自動車メーカー首位の快挙を果たし、NIOの株価も安定した上昇を見せるなど、理想汽車と小鹏汽车は比較的恵まれたIPO環境だった。
■Lizhi(荔枝)
音声配信のLizhi(荔枝)は2020年1月にナスダックへ上場を果たし、中国音声配信業界初の上場企業となった。新型コロナウイルスの影響によりネットサービス業界は恩恵を受け、Lizhiもユーザーを伸ばしてきた。第一四半期のMAUは前年同期比34%増加の5450万人、課金ユーザー総数は前年同期比60%増加の45万300人に達した。同社は売上を伸ばした一方、赤字規模も拡大し、上場後の株価も落ち込みを見せた。
しかし2021年2月からアメリカの音声SNSアプリClubhouseが大人気となり、これを受け、音声配信関連の上場企業の株価がこぞって高騰。Lizhiの株価も一時は80%と急騰し、時価総額は過去最高を記録した。
提供・チャイトピ!
【関連記事】