ロレックスは高級時計としてもっともポピュラーな存在である。長らく成功者の証となってきた。しかし、その状況が変わってきている。感度の高い富裕層のファーストチョイスがロレックス以外にシフトしているようなのだ。
ロレックスは知名度が高すぎてステータスを主張しづらい
ロレックスはもう古い、と振っておいていささか恐縮だが、知名度・売上ともに日本における高級時計の中では未だロレックスが最強だ。街の高級時計ショップをのぞけば、売り場の一等地を大きく占めるのはロレックスだし、リセールバリューもトップクラスだろう。
もちろん、この現象は人気があって売れているからにほかならないのだが、高級時計と言ったら猫も杓子もロレックスという状況が変わり始めていることも確か。特に若くして経済力をもった層には、ロレックスより魅力的に映るブランドがいくつか存在する。
彼らにとって、ロレックスは誰もが知っている存在故に自分らしさを主張できない。それに、お金を持ったオジサマたちの御用達ブランドというイメージがあるため、古臭いブランドに感じてしまう。最近少しずつモダンになってきたとはいえ、デザインは基本的にオーセンティックで、オールド・ファッション感は否めないところだ(もちろん時計ファンからすれば、それがロレックスの魅力なのだが)。そんな状況で今、人気を集めているのが、「ウブロ」と「リシャール・ミル」だ。
ウブロの人気の秘密は新しい素材の採用にあり!
カーボン、セラミック、チタニウム、レジン、パラジウム……これらはウブロの時計のスペックシートを見れば出てくる素材の名前である。これだけで、ウブロがいわゆる高級時計とどれだけ異なったブランドかわかるだろう。ロレックスもベゼルなどの一部パーツにセラミックを使用しているとはいえ、ケースはあくまでステンレススティールやゴールドなど伝統的な素材を使用する。
一方、ウブロは“異素材のフュージョン”をコンセプトに掲げるブランド。ありとあらゆるパーツにこれまで考えられなかった素材を採用し、しかも何種類も組み合わせるのだ。
1979年に誕生したウブロは、メタルやレザーを採用することが当たり前だった高級時計の世界で、貴金属にラバーストラップを採用し評判を呼んだ。新興ブランドが伝統的ブランドと伍していくには、「異素材を使用した新しいデザインコード」という武器が必要だったのだ。
これまでの高級時計は各パーツを調和させる引き算の哲学で作られていたが、ウブロのデザインはその逆、足し算の哲学で作られているといえる。ケースを複数に分割して重ねるレイヤー構造にしたり、パーツごとに別々の素材を採用したりと、各パーツが個性を主張する立体構造が特徴だ。
そんな高級時計の新しい形に飛びついたのは感度の高いセレブリティたち。当初、ウブロは限られた富裕層には知られていたが、一般的には知名度があまりなかった。しかし、ここ数年、先進的なデザインを持つウブロの人気は、ロレックスに飽きたお金持ちに広く伝播してきたようだ。まだ数は少ないものの、感度の高いお金持ちの間ではロレックスよりもウブロを選ぶ人も多いだろう。
リシャール・ミルは富裕層に売れている超ハイテクウォッチ
ウブロとは価格帯が違うので単純に比べるわけにはいかないが、リシャール・ミルも富裕層が今こぞって買い求めているブランドのひとつだ。2001年にデビューした当ブランドも、ウブロ同様に現代的なデザインコードを持つ。つまり、新しい素材をふんだんに使った立体的な構造が特徴だ。リシャール・ミルは1,000万を超える時計を多くラインナップするが、この“新しい素材”がとんでもない代物なのだ。
リシャール・ミルではネジ一本に至るまで既製品を使わず一から開発する。宇宙産業やレーシング界で使用される極めて高価でハイクオリティな素材が至るところに使われており、機械式にもかかわらず軽量かつ衝撃にも強い。
世界的なテニスプレーヤー、ラファエル・ナダルが腕時計をしながらプレイしている姿を目にしたことがあるかもしれない。この時計こそリシャール・ミルだ。機械式時計を所有している人ならばご存知だろうが、クォーツ式に比べ重さのある機械式は、装着しながらスポーツすること自体難しい。さらにショックに弱いので着けたまま運動するのもご法度なはず。ナダルのようなトップアスリートが着用しながら激しいプレイをできるのは、ハイテク素材を時計に持ち込んだからにほかならない。
そんなリシャール・ミルの時計は当然、大量生産は不可能で流通量も限られている。そんな希少性も、他人とかぶるのを極端に嫌がる大金持ちの所有欲を刺激しているのだ。
もはや現代の富裕層にとっては、広く一般に知り渡りデザインも古風なロレックスでは、自分のスペシャル性を主張できない。現在のテクノロジーを駆使し、新しい高級時計デザインの地平を拓いたウブロやリシャール・ミルの価値観は確実に富裕層の心を捉えつつある。
文・吉本隆太(時計ライター)
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