大学の私的収益率は高いが、社会的には浪費だというのは実証的に確立された事実だが、そのメリットは大学のランクで大きく違う。次の図のように大卒男子平均の生涯賃金は2億8600万円で、高卒より4600万円高いが、慶応卒より1億5000万円低い。大卒と高卒の差より大学のランクの差のほうが大きいのだ。


男性の生涯賃金(2016年賃金構造基本統計調査)

Fラン大学が大卒と高卒の中間とすると、2億6000万円ぐらいだろう。これは高卒より2000万円多いが、年収500万円とすると、学費と4年間の賃金の合計より少ない。大学の私的収益が機会費用(学費と賃金)を上回るには、少なくとも大卒平均のランクでないと元はとれないのだ。

だから偏差値50以下の大学に入るメリットはない。それより専門学校でスキルを身につけたほうがいい。Fラン大学は私的にも社会的にも浪費なので、政府がこれを無償化すると、勉強する気もない学生が大学に入り、老人医療無料化と同じく膨大な無駄を生み出す。

老人医療無料化が30年間も続いたために、増設されたベッドに合わせて延命治療が行われ、長期入院の患者が増えて医療機器が大量に導入され、医療費が膨張した。そしてこれが既得権になり、医師会が窓口負担の引き上げに抵抗する。

それを押しきってやっと2割負担になると思ったら、その給付削減分を政府がピンハネして大学無償化に流用する。こんな「少子化対策」は、現役世代をますます貧困化し、子供は減るだろう。維新の案は自民にとって渡りに船だ。維新は自民の補完勢力として生き延びるのだろう。