自民・公明と維新の協議で教育無償化の方向が打ち出され、維新の前原共同代表は「高等教育の無償化」を明言した。これは私立大学の学費もすべて税金で負担するという意味である。
維新が補正予算に賛成すると過半数になり、国民民主の減税案は骨抜きになる。これで自公維の枠組ができれば野党は分断され、石破政権は通常国会も乗り切れそうだ(2023年12月の記事の修正版)。
大学に拡大した「学校ポピュリズム」
岸田政権は3人以上の子どもがいる世帯について、2025年度から大学の学費などを無償化する方針だ。少子化対策の予算3.5兆円は、医療保険からの「支援金」でまかなう予定である。大阪府や東京都が高校無償化を決めたことから全国に波及すると予想されていたが、政府が大学を無償化するというのは予想を上回る。これによって全国に学校ポピュリズムが拡大するだろう。
それによって何が起こるかは明らかだ。1973年に老人医療無料化が行われたあと、日本の病床数は激増し、アメリカを抜いて世界一の200万床となった。窓口負担がゼロなのだから、老人ホームに行くより安く、病院は老人を寝かせておくだけで保険点数が稼げるので、どんどん病床が増え、入院日数も世界一になった。
同じことが大学にも起こるだろう。いま私立大学の半数以上が定員割れになっているが、学費が無料になれば、高卒で就職できなかった若者が、大学に行って時間をつぶすようになる。これで底辺のFラン大学は延命できるが、労働生産性は下がる。
人手不足の大きな原因は、私立大学が定員割れで誰でも入れるようになったため、昔だったら高卒で就職していた若者が、Fラン大学に入るようになったからだ。企業はFランなんて大卒にカウントしていないが、学生は大企業のホワイトカラーになろうとする。
このミスマッチは、これからますますひどくなる。Fランにできるような単純事務作業は機械学習でできるので、専門技能のない大卒には職がなくなる。最近は大学を出てから専門学校に行く学生が増えているが、これでは大学の4年間はまるまる無駄である。