このような財政調整が始まったのは、1983年の老人保健法からである。これは1973年に始まった老人医療の無料化で負担が市町村の国保に集中したことから、給付の30%を国庫負担し、70%を各保険者(健保組合)が拠出することにしたものだ。

しかし老人医療費は急速に膨張し、国保の赤字を埋める健保組合が1999年に不払い運動を起こした。その結果、2002年に老人医療が1割負担になり、2008年に後期高齢者医療制度ができたが、財政調整の制度は残った。不明朗な支援金は、30年も続いた老人医療無料化のなごりなのだ。

消費税を上げると健康保険料は半減する

この矛盾が超高齢化で顕在化した。今の後期高齢者は現役のときほとんど保険料を払っておらず、企業と雇用関係もないので、本来は自分で保険料を払わないといけないが、後期高齢者の保険料は、給付の1割にも満たない。これは実質的には国営なのだから、すべて税で負担するのが筋だが、それだと消費税を増税するしかない。

しかし消費税は橋本内閣で大事件になってから増税が封印され、特別会計の中でやりくりすることが常態になり、自公政権はこの支援金を既得権として守った。このため後期支援金と前期調整額の合計9.9兆円が現役世代から支出されている。

この支援金をすべて消費税に置き換えると5%の増税が必要になるが、それだけ保険料が減る。特に健保組合の保険料は半分に減らせるが、全体としての負担額は同じだ。

後期高齢者医療の給付は9割が税金になり、実質的に国営化される。財源が税金になれば、いま話題の診療報酬引き下げのように財務省がきびしく査定できるので、今の無責任な支援金よりはましだろう。

医療は最大の成長産業

支援金や拠出金は廃止し、保険料で足りない部分は税でまかない、窓口負担は一律3割とすべきだ。高度医療や延命治療は保険適用外とし、民間保険を活用して自由診療でやればいい。医療・福祉はこれから製造業を超える944万人の雇用を吸収する国内最大の産業になる。豊かな老人は豊かな医療サービスを受けることが、経済成長の源泉にもなる。