自民党総裁選で河野太郎氏が「現役世代の保険料の負担軽減」に言及し、健康保険組合などから老人医療に支払われている支援金の見直しを提案しました。2023年11月22日の記事の再掲。
岸田政権の政策の特徴は、目的がはっきりせず、場当たり的に財源を求めることだ。少子化対策の財源も、増税ではなく医療保険に上乗せして徴収するという。なぜ少子化対策の財源が医療保険なのか。リスキリング(職業訓練)の予算は雇用保険(失業手当)から支出される予定だ。政府の審議会でも、目的外使用に疑問の声が相次いだという。
サラリーマンの健康保険料の半分は老人医療の「支援金」
こうした政策には、一つだけ一貫した方針がある。それは消費税は上げないということだ。社会保障給付が急速に膨張している状況で、その財源となる消費税の増税から逃げるので、社会保険料の流用が行われるのだ。これは少子化対策が初めてではない。次の図のように後期高齢者の医療給付の40%が、それ以外の保険から流用した後期支援金6.3兆円でまかなわれている。
厚労省の資料
それ以外にも市町村国保の赤字(主として前期高齢者)3.6兆円をサラリーマンの組合健保・協会けんぽが埋めている。この結果、組合健保の保険料収入6.9兆円の半分が支援金などに流用され、組合員への給付には半分しか使われていない。
負担は健保組合のサラリーマンが負うが、彼らには給付を受ける権利はなく、その使途もチェックできない。この負担のおかげで健保組合の8割が赤字になり、解散が相次いでいる。
「国民皆保険」の矛盾をとりつくろう支援金
この根本には、国民皆保険の矛盾がある。戦前からの健康保険は企業の従業員を対象とするもので、自営業者を想定していなかったが、岸信介が自民党の集票基盤だった農村に支持を広げるために国民年金と国保をつくった。
しかし皆保険は源泉徴収のサラリーマンならできるが、自営業者や非正規労働者は未納が多いため、保険会計は赤字になる。それを税金で埋めると財政赤字が膨大になるので、取りやすいサラリーマンから取ることにしたのだ。