全国の家電量販店やネットショップでPOSデータを集計する「BCNランキング」によると、AndroidをベースにしたOSを搭載するスマートフォン(以下、Androidスマホ)市場において、2020年の年間販売台数No.1に輝いたメーカーは、シャープだった。今回で4年連続となるNo.1に大きく貢献しているのは、エントリーからミドルまで幅広いラインアップ を揃える「AQUOS sense」シリーズ。多くの支持を集める同シリーズの生まれた背景や新製品に込めた想いを、開発陣に聞いた。
20年のAndroidスマホ市場をBCNランキングで振り返ると、1位シャープのシェアは24.4%。2位とは10ポイント近い差という圧倒的なシェアを獲得している。この4年間の人気を常に支えてきたのが、幅広いニーズに応える「AQUOS sense」だ。性能と価格のバランスが整っており、スマホ初心者だけでなく、同じ製品をSIMフリー版としても販売していることから、コストパフォーマンスを重視するスマホに詳しい人にも受け入れられている。
変わり続ける「必要十分」
AQUOS senseシリーズの開発を担当する通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部の平嶋侑也主任は、「必要十分な機能・性能」をコンセプトに据えて開発していると力強く語る。「感覚的に使えるもの」「なんとなく、いいと思える」「言葉にできない心地よさ」を目指して開発された同シリーズは、ニーズにピタリと当てはまった製品だったわけだ。
ただ、スマホに求められる「当たり前」は、年々高度化している。5~6年前は電話やメールなどの機能が主流だったが、次第に高画質な画像を見るようになり、音楽を聴くようになり、ついには動画やライブ配信を楽しむようになってきた。時代にあわせてスマホも進化していくのは、必然ともいえるだろう。
こうしたニーズをストレスなく実現するため、シャープはその時々にあわせて「必要十分」を定義し続けている。テスターによる試用や幅広いユーザーへのヒアリング、市場調査を重ね、機能と性能を絞り込んでいく。その際には、価格への配慮も忘れない。「あくまでニーズありきだが、必要十分を実現するには手に取りやすいというポイントは重要。価格も欠かせないスペックになる」と、通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部の清水寛幸課長は語る。
手に取りやすいのは、「手ごろな価格だから」という理由だけではない。AQUOS senseシリーズが初代から一貫して特徴として挙げている「電池の持ち」も選ばれる理由の一つだ。そのパワーはなんと“1週間の電池持ち”。1日1時間の使用を想定した計算ではあるが、12時間通しで動画を視聴することもできる。1日普通に使って充電し忘れたとしても、翌日も問題なく使えるスペックだ。
シリーズの数字を重ねても、この電池持ち性能は引き継がれてきた。スマホのスペックが上がるたびに消費電力も上がるはずだが、排熱や省エネ性能を向上させることで効率化し、駆動時間を確保し続けている。なぜ、電池持ちにそこまでこだわるのか。
清水課長は、「とりわけ二つ折りケータイから移行してくる方々に人気が高い。スマホを使う頻度が低く、小まめに充電する習慣がなくても、senseシリーズなら同じような使用感で使い続けることができる」と理由を説明。シンプルスマホモードも備えているので、スマホに馴染みのなかった方の入り口としても活躍しているようだ。