話すべきテーマは3×3の中にある

では、具体的に、1on1で何を話せばいいのか。それがわからず、悩む上司は少なくありません。基本は、前述の「業務」「個人」「組織」の各レベルで、部下が考えていることを聞き出すことです。

さらに、それぞれのレベルを「現在」「過去」「未来」の3つに時間軸で分けるといいでしょう。こうすることで、細やかな対話ができます。つまり、1on1で部下と話すテーマは9つあることになります。それを整理したのが、「すり合わせ9ボックス」です。
 

THE21オンライン
(写真=THE21オンラインより引用)

1回の1on1で、9つのテーマ全部を話す必要はありません。毎回、部下それぞれの状況に合わせて、どのテーマに重点を置くかを決めましょう。

新入社員なら「業務レベル」の話が多くなるでしょうし、マネジャー的なポジションが視野に入ってくる中堅社員なら、「組織レベル」の話をするのが有意義でしょう。

「個人レベル」の「現在」に当たる「ライフスタイル」については、1on1の冒頭で雑談のように話すことで、ざっくばらんな雰囲気を作り出すことができます。「どう、調子は?」「週末はどこか行ったの?」などと聞くのです。

家族や趣味、関心事、副業をしているならその内容なども「ライフスタイル」に入ります。ただ、「ライフスタイル」については話したくない部下もいますから、ムリに聞き出すのは禁物です。反応を見つつ、積極的に話したがっているようなら、関心を持って耳を傾けましょう。

テーマの潜在的な「奥行」を掘り下げる

「すり合わせ9ボックス」は、1on1の前の準備やあとの振り返りに使ってもいいですし、部下と一緒に見ながら1on1を進めるのもいいでしょう。いずれにせよ、上司がやるべきことは、各ボックスを深くすり合わせることと、各ボックス間をつなげることです。

「ボックス」と呼んでいる通り、それぞれのテーマには奥行があります。奥のほうには、部下自身が言語化できていない、潜在的な思いがあるはずです。

ですから、「どうしてそう感じたの?」「なるほど、ではこういう視点では?」などと質問を投げかけて、各ボックスを深くすり合わせることが必要です。

すると、部下が話すことに納得できないことも出てくるでしょうが、それはむしろ歓迎すべきこと。「すり合っていない」ことが認識できたというのは、大きな進歩だからです。

それを踏まえて、上司から見えているものを押しつけるのではなく、伝える、あるいは合意点を探るなど、対応ができます。そして、例えば「過去」の「業務」を振り返って、この1週間の成功経験や失敗経験を洗い出したら、「未来」の「業務」の改善につなげる。

また、その経験が部下の能力をどう伸ばすかという「パーソナリティ」のボックスに話をつなげ、さらに「将来キャリア」のボックスにつなげる、ということもできるでしょう。こうして、ボックスのテーマを活用しながら対話を行ない、部下を支援しましょう。

世古詞一(サーバントコーチ代表取締役)
(『THE21オンライン』2020年11月11日 公開)

提供元・THE21オンライン

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