【木村ヒデノリのTech Magic #037】 リモートワークも相まって印鑑の運用がターニングポイントを迎えている。そんななか、印鑑のリーディングカンパニーであるシャチハタが新たなサービスをリリースした。シャチハタはこれまでも「パソコン決済Cloud」というサービスを展開してきたが、11月24日に「ShachihataCloud(シャチハタクラウド)」としてリニューアル。印鑑メーカーが提案する電子印鑑サービスがどのくらい業務効率を上げてくれるか検証していきたい。
 

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シャチハタが展開する電子印鑑サービス
「ShachihataCloud(シャチハタクラウド)」の実力は?(写真=BCN+Rより引用)

日本独自の慣習、実は法的効力の無い印鑑

 まずは印鑑の法的効力について触れておきたい。実は印鑑、電子印鑑にかかわらず押印自体に法的効力はない。押印という行為はあくまで確認や承認の意思を証拠として残すためのもので、それ自体が契約になるわけではないのだ。つまり契約書に押印が無くとも署名があれば法的には成立している。ただし、押印があると「承認した」という2重の証拠となり書面の信頼性は上がる、というわけだ。

 e-文書法の施行により、契約に関しても電子的に処理するサービスが出始めた。しかし、これらには認印的な電子印鑑機能しか備わっておらず別の形で契約の有効性を担保している。シャチハタクラウドはこれとは逆のアプローチで、押印していたこれまでのワークフローをそのまま電子的に処理することをコンセプトにしている。押印を電子的に、ということよりも、承認プロセスを丸ごと電子化する、ということに注力したのが非常に良いと感じた。
 

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社外も含め、今までの承認フローを踏襲しながら電子化しているのが秀逸。
コンセプトはBPS(ビジネスプロセスそのまんま)と名付けられている(写真=BCN+Rより引用)

年齢を問わず使えるインターフェースと中小企業が導入しやすい価格

 ユーザーインターフェースはリニューアル前も使いやすかったが、シャチハタクラウドになってより直感的に使えるようになった。ファイルもPDF、Word、Excelをドラッグドロップでアップロードでき、押印までは2ステップで完了する。自分の印面は入力された苗字から自動生成されるのだが、どれも本物の印鑑とくらべて遜色がない。このあたりは今まで多くの認印を作ってきたシャチハタならではと言えるだろう。
 

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UIはシンプルで、初めてでも直感的に使えるように工夫されている(写真=BCN+Rより引用)
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印面は三種のフォントから選べ、日付入りの印鑑を選ぶこともできる(写真=BCN+Rより引用)

 価格は印鑑一つにつき何と100円からで、初期費用もかからない。押印する人数が増えると導入費用が嵩むこともあるが、中小企業では導入しやすい価格設定と言える。契約は10個単位で、請求のスパンは年単位。例えば小規模な事業所で、角印を数名で共有しつつ各自が氏名印を持つことを想定すると、7名~10名で承認フローを組んでいる事業者は年間1万2000円で電子化できることになる。

 より高度な信頼性を求めるのであれば、ビジネスプランを選べばいい。ビジネスプランでは「複合的な認証で本人性を高める」「電子署名を付与して原本性を高める」「タイムスタンプを付与して存在証明を担保する」といった電子処理の弱点をカバーする機能が備えられている。これらの機能を利用するとしても月額3000円から導入できるという価格設定にはシャチハタの本気度が窺えた。
 

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共通印も一つとカウントされるため、10個の契約でも上記の場合は7人での運用となる(写真=BCN+Rより引用)
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ビジネスプランにはより信頼性を高める機能が盛り込まれているが、
小さな事業者であればスタンダードプランでも十分活用できる内容(写真=BCN+Rより引用)