白物家電は過去2番目に高い水準
その後の結果はケーズHDが予想した通り、新型コロナ禍でありながら家電業界は好調に推移した。日本電機工業会(JEMA)が11月中旬に発表した20年度上期の白物家電の国内出荷金額は、1兆3696億円(前年同期比99.2%)の微減となったが、これは19年9月に消費増税の駆け込み需要があった影響によるもの。ふたを開けてみれば、過去10年でもっとも高い出荷金額を記録した19年度上期に次ぐ2番目に高い水準だったのだ。
例えば、梅雨明けからの猛暑でエアコンの出荷台数は統計が確認できる1972年度上期以降、過去最高の実績をたたき出したし、さらに5、6月から支給が本格化した特別定額給付金が、比較的高額な家電製品の販売を後押しした。
BCNランキングによるデジタル家電の販売台数データにも、懸念されていたWindows 7サポート終了後の落ち込みは微塵も表れなかった。1月4週(20年1月20~26日)の販売台数を100としたノートPCの指数推移をみると、4月3週には1.5倍となる145.4を記録。緊急事態宣言の期間中に備えたテレワーク需要が突如として新規に勃発し、PCやPC周辺機器が売れた。
また、特別定額給付金などにより薄型テレビ(液晶と有機ELの合算)は、5月に台数ベースで前年同月比136.0%、金額で同143.0%、6月は台数で140.9%、金額で143.0%となった。9月と10月の乱れは前年の消費増税による影響だが、直近の11月も台数で125.3%、金額で141.5%と、東京五輪が延期になったにもかかわらずテレビの好調ぶりは年間を通じて持続した。
このようにデジタル家電も白物家電も好調だった結果は、家電量販各社の21年3月期決算にも大きく反映された。詳細は次回に触れるが、好調だった決算が多かった家電量販企業がある一方で、都市部の多くの店舗を構える企業は苦戦した。新型コロナが同時にもたらした、郊外と都市における需要の逆転現象だ。
新型コロナにより、それまでの都市部への一極集中が減り、郊外に人もお金も分散する動きがみられるようになった。まさにケーズHDのレポートが指摘していた「郊外の昼間人口の増加」が、半ば強制的に郊外と都市の明暗を分ける形になってしまったのだ(つづく)。
*「BCNランキング」は、全国の主要家電量販店・ネットショップからパソコン本体、デジタル家電などの実売データを毎日収集・集計しているPOSデータベースで、日本の店頭市場の約4割(パソコンの場合)をカバーしています。
文・細田 立圭志(BCN)/提供元・BCN+R
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