ローンが終わっても油断するな!毎月の支払いは永遠に終わらない
飲食店だから、さすがにこれはあるだろう、と勝手に思い込んでいた食洗機も、この物件には残されていなかった。
「今まで、どうやって食器を洗ってきたんだろう」と考えると、何度か食事をしたことがある俺としては、なんとも言えない複雑な気持ちになったが、こればかりはラーメン屋には絶対に必要なものだから、すぐに購入した。
業務用だから、これもやっぱり高い。冷蔵庫もそうだったけど、開業する時に6年間払い続けることを知らずにローンを組んで購入した。6年間と知ってからも、店が続けば、月々の支払いはなくなる。そうなれば経営はグッと楽になるんだろうなと思って、そこはグッと歯を食いしばって耐えてきた。
しかし現実は違う。数年前、ローンは終わったのだが、まだ支払いは終わらない。なぜならば「保守料」という名目で、年間十数万円を払わなくてはいけないからだ。「十数万円ぐらいならいいじゃないか」と思うかもしれないけど、冷蔵庫にも、食洗機にも、製氷機にも「保守料」がかかってくるわけで、すべてを足したら、けっこうな金額になってしまう。それこそ、ラーメンを何杯作っても追いつかない!
とはいえ、それらの機材が壊れてしまったら、もう営業できなくなってしまうわけで、保守料は支払わないわけにはいかない。
そう、契約した時点で永遠の支払いループはもう始まっているのだ。
エアコンが高かった、という話は書いたが、それだけ大きなエアコンを一年中、回し続けているのだから、電気代だって安くはない。これもまたケチれない部分だし、月々の支払いで言えば、当然、家賃も駐車場代もお店の保険代もかかる。
さらに計算外だったのは、車で来店されるお客さんのために借りた駐車場代だ。
昔はおおらかな時代だったから、店の前に路上駐車したまま食事をしていても、基本的には見逃してくれていたけど、このご時世、そういうわけにはいかない。道路沿いに車を停めたら、すぐにパトカーが飛んでくる。実は近くに交番があるのだ。
だから店をオープンする時に3台分の駐車場を借りた。それでも足りないので店の裏にもう1台分を借りた。これでまた支出がドッと増える。
一日中、自分の車を停めておくんだったら、月に数万円を支払っても、まぁ仕方ないか、ということになるけれど、まるっきり利用されない日もあるのに、同じ額を支払うのはしんどい。これも顧客サービスだし、駅から歩いてくるのはしんどい場所に店を構えたことで生じたリスクだから、「仕方ないな」と思うしかない。
たとえローンが終わっても、これだけのお金が毎月、消えていく。
前に「慣れてきたら、別の場所に移転する」と考えていたことを明かしたけれども、初期投資にお金を遣いすぎてしまったことが響いて、そのプランは断念せざるを得なくなった。
この店を残して2号店を出すほど儲かっていないし、新たに店を出すことの大変さと出費の多さを知ってしまったら、とてもじゃないけど、その気すら起きない。
資金、心身ともにもそんな余裕はなかったから、「このままここで営業を続けていく」という選択肢しか、俺には残されていなかった。
ラーメン屋でチェーン展開までして成功している人はごく一部にすぎない。過剰な夢や期待を抱くのはやめておいたほうがいいだろう。
川田利明(かわだ・としあき)
1963年12月8日生まれ。栃木県下都賀郡大平町(現:栃木市)出身。高校ではレスリング部に所属し、国体優勝後の1982年の3月に全日本プロレスに入団。同年の10月4日、冬木弘道戦でデビューを果たす。1994年には『94チャンピオン・カーニバル』にて初優勝。同年、日本武道館大会にて第12代三冠ヘビー級王者となった。現在、選手としてはリングから遠ざかっているが、2018年からは自身初プロデュースとなる『Holy War』を開催。プロレス界の発展に尽力している。一方、2010年6月12日に、ラーメンと鶏の唐揚げを看板料理として、自身のニックネームにちなんだ『麺ジャラスK』を開店。今年で11周年を迎えた。テイクアウトも充実!お店の情報は川田さんのTwitter:@orenooudouでチェック!
文・川田利明、ZUU online/提供元・ZUU online
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